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役者・光石研「個性を出さないほうがいろんな役をもらえるんですよ」~無個性の人間力

[週刊大衆2016年06月20日号]

役者・光石研「個性を出さないほうがいろんな役をもらえるんですよ」~無個性の人間力

 役者っていうと、強烈な個性を持った人の集まりだと思われがちなんですが、僕自身はまったく個性ってないんですよ。高校生のときに、たまたまオーディションに受かっちゃって、この世界に入っただけですからね。僕の上の世代の役者さんは、劇団でしっかりと演技の勉強をされてきた方や、映画会社のニューフェイスに選ばれた人ばかりでした。それが、僕らの世代から、素人を起用するっていうのが、ちょっと流行ったんです。だから、いわばモグリですよ(笑)。

 でも、20代の頃は、せっかく映画に出るんだから、やっぱり爪痕を残したいなって思うじゃないですか。目立っちゃいけないところで目立とうとしたり、アドリブを勝手に入れたりして、もう迷惑どころの話では済まないくらい、当時の監督やスタッフの手を煩わせてしまったと思いますね(笑)。

 それが、40歳近くになると、わかってくるんです。自分に個性がないってことに。でも、この仕事は続けていきたい。そのときに、個性的である必要なんてないんだと、ある意味、開き直ったんですかね。結局、個性を出さないほうがいろんな役をもらえるんですよ。個性が強いと、できる役が限られてくるじゃないですか。でも、個性がなければ、“あいつなら、なんでもできるだろう”と思ってもらえるのか、声をかけてもらう機会が増えるんですよ(笑)。

 まあ、役者になりたての頃に抱いていた、たくさんお金を稼いで、かわいい女の子と仲良くできるんじゃないかという淡い期待は、まったく叶えられてはいないですけどね(笑)。でも、撮影の現場が好きなんですよね。16歳で初めて、映画に出たんですが、各ジャンルのプロフェッショナルがやってきて、目の前でどんどん映画の世界を作っていく。完成した映画を見た記憶ってあまりないんですが、撮影現場で感動したことは強烈に覚えているんですよ。

 だから、この仕事をして、40年近く経ちましたけど、“何時間、寝た?”“腹減った~”と本当に他愛もない話を、現場のスタッフと交わしながら、みんなで一緒にひとつの作品を作っていく。その楽しさを味わいたくてやっているんです。もちろん、大変な現場もありますよ。スケジュールが押しちゃって、朝4時まで撮影して、翌朝6時からまた撮影。それが1週間続くと、さすがに辛いですね。あと、焼身自殺する役では、変な油を全身に塗られちゃったりとか(笑)。アフリカ人役を演じたときは、全身を黒く塗って、腰みの1枚だけ身につけて、そのまま待たされたりしたこともありましたね(笑)。

 ただ、現場が辛ければ辛いほど、スタッフとの間に絆が生まれるんですよね。何年後かに、またそのスタッフと違う現場で再会したら、“あのときは大変だったよね~”って笑いながら話せるのが、楽しいんです。たくさんの作品に出させて頂けるようになってから、“役作りが大変じゃないですか?”なんて聞かれたりもしますけど、そんなことはないんですよ。現場に行けば、スタッフが役を作ってくれるんです。もちろん、僕自身でもある程度の準備はしていきますけど、用意してもらった役の衣装を着て、作られたセットに立てば、自然とその気になっていくんですよ。だから、僕はスタッフが作り上げた世界に入っていくだけなんです。

 今回、出演した映画『夏美のホタル』の現場もそうでした。僕が演じたのは、過去の事故で半身不随になってしまった男性役なんですけど、衣装を着て、杖を持つと、その役に入っていけるんです。泊まりの現場だったので、スタッフ、共演者と夜はお酒を飲んで、バカ話をしましたね。やっぱり、現場は楽しいなと思いましたよ。今後も、役者という仕事を背伸びすることなく、1日でも長くやっていけたらなと思います。

撮影/弦巻 勝


光石研 みついし・けん
1961年、福岡県生まれ。77年、高校在学中に映画『博多っ子純情』のオーディションに合格し、役者デビュー。80年、役者を目指し上京。学園物のドラマや映画で活躍。その後、“名バイプレーヤー”として、数々の映画やドラマに出演。現在までに200本以上の作品に出演し、日本映画界に欠かせない存在となっている。

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