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風間トオル「貧乏時代には、教科書を食べたこともあります(笑)」~情を持って生きる人間力

[週刊大衆08月08日号]

風間トオル「貧乏時代には、教科書を食べたこともあります(笑)」~情を持って生きる人間力

 今、こうして僕が役者として仕事ができているのは、祖父と祖母のおかげですね。2人の影響は、90%くらいあると思います。そもそも、両親は、僕が5歳のときに離婚して、別の相手のもとへ行ってしまった。なので、僕は父方の祖父と祖母に育ててもらったんです。ただ、祖父母は年金暮らしでしたから、本当にお金がなかった。

 食べる物もそんなになかったから、常にお腹を空かせていました。平日はまだ、学校の給食があったので、そこまで困りませんでしたが、休みの日は、死活問題。近所の公園で、女の子たちがつつじの花の蜜を吸っているのを見て、それからは公園や、多摩川の河原で食べられる草花を必死で探しました。なかでも、紫色のアサガオがほんのり甘くて、美味しかったですね。途中から、飢えを凌ぐためというより、“これは食べられるのか”という好奇心が勝って、カマキリの足をかじってみたり、新聞紙や教科書まで口に運んでみました。さすがに、どれもおいしくなかったんですが、国語の教科書だけは、ほんのり甘かったのを覚えています(笑)。

 そんな貧乏生活を『ビンボー魂 おばあちゃんが遺してくれた生き抜く力』という本にまとめたんです。周りからは同情されることも多いんですが、僕は、ない物はないんだから、しょうがないって思っていました。確かに、周りの家庭と比べれば、ないものばかりでしたけど、祖父母には、感謝の気持ちしかない。

 祖母は、すごくお人好しだったんですよ。貧乏なのに、知らない人を家に連れてきて、平気でご飯をご馳走したりする。連れてくるのは、まだいいほうで、住所だけ教えて、その知らないおじさんが勝手に家に来たりもしました。ある日、家に帰ったら、知らないおじさんがいるんで、誰だろうこのおじさんって思っていたら、“おばあちゃんに、ご飯食べていけって言われたんだけど”って。貧乏でしたけど、ご飯とおしんこぐらいはあったので、それを食べて帰っていきましたね。あれは、誰だったんでしょうね(笑)。

 ほかにも、カニの行商が家にやってきたときは、祖母は相手の苦労話に耳を傾けて、しまいには全部買ってしまうんです。しかも、それを近所に配って回る。お金ないのに、明日からどうするんだろうって心配しても、“明日は明日”って笑っている。ただ、近所の人も裕福ではなかったので、大きなお返しがくるわけではないんですが、小さなお裾分けが、何人からも返ってくるんです。そんな家庭で育てられたもんだから、食べられない若い子には、食べさせてあげたいなって思うんです。なので、役者の仕事をするようになってから、舞台をやっているときは、エンゲル係数が、普段の3倍とかに跳ね上がっちゃいます(笑)。

 稽古のあとに、“飯行くぞー”って一人の若い子に声をかけると、“僕もいいですか?”“私もいいですか?”って、結局何人もご飯に連れていくことになったりするんですよ。神戸の公演のときは、15人で有名な餃子屋に行って、その後、“神戸牛が食べたい”って若い子が言うから、焼き肉店へ。次は“締めにラーメン食べましょう”って言うので、15人でラーメン屋まで行きましたよ。若い子に、お金を払わせるわけにはいかないし、そもそも、持ってないでしょう。若い子が多い時は大変です(笑)。

 でも、そういう人と人のつながりが大事だと思うんですよね。役者なんて、いつ無職になるかわからないような仕事ですから。それを30年近く続けてこられたのは、周りの人のおかげですからね。なにより、僕自身、人と会って食事をしたり、お酒を飲んだりするときが、一番楽しい。世の中は、お金で回っていると思いがちですが、本当に回っているのは情なんだと思います。祖母がそうだったように、人情を持って、人と接すれば、情が返ってくる。だから、人とのつながりを断たなければ、何があってもなんとかなるんだろうなと思います。

撮影/弦巻 勝


風間トオル かざま・とおる
1962年神奈川県生まれ。東京デザイン専門学校を卒業後、『メンズノンノ』などで、モデルとして活躍。89年にドラマ『ハートに火をつけて!』で俳優デビュー。93年には、映画『わが愛の譜 滝廉太郎物語』で日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞。その後も『はみだし刑事情熱系』シリーズなど数々の映画、ドラマに出演。その他にも舞台、CMでも活躍し、現在も『科捜研の女』シリーズなど人気作に出演している。

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