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小林節「僕の根本にあるのは、差別してきた連中を見返してやりたいっていう思い」~差別から這い上がる人間力

[週刊大衆2016年09月12日号]

小林節「僕の根本にあるのは、差別してきた連中を見返してやりたいっていう思い」~差別から這い上がる人間力

 国に6000万円カモられましたよ(笑)。7月の参院選で、安倍政権の憲法改悪を阻止すべく『国民怒りの声』という政治団体を立ち上げて、10人の候補者を揃えた。出馬に必要な供託金は、1人600万ですから、合計で6000万。すべて、自分のポケットマネーから捻出したんです。

 ただ、選挙戦が始まったら、マスコミが全然相手にしてくれなかったんですよ。選挙後に彼らに訊いたら、現職の政治家がいなければ、政党扱いしないので取り上げないんですって。それ、先に言ってほしかった。

 結果は、惨敗ですよ。でも、今回の一件で憑きものが落ちましたね。妻は、ストレスから円形脱毛症になってしまって、10年は静かにさせてくれって言うんです。もう、これ以上、苦労をかけたくないし、政治はもういいかなと思っています。

 今回の参院選のように、私は今まで、いろんなところに噛みついて、吠えてきた。その原点は、僕が弱者ってことなんですよ。僕は先天的に左手の指がない。それで、いろいろな差別を受けてきました。今でも、鮮明に覚えていますが、小さい頃、幼稚園に入ろうとしたら、そこの人に、“こういうお子さんは、他の園児に迷惑です”って断られた。

 ほかにも、近所に子どもが遊ぶような空き地があったんですが、そこに“僕も入れて”って、要するに公園デビューですよね。そしたら、ガキ大将に、バーンっと泥のなかに突き飛ばされて、“お前みたいなやつとは遊んでやらない”っていうんです。

 いじめたやつらを本当に殺してやろうって思っていましたよ。でも、そう簡単に殺せるわけがない。悶々と考えていたときに、友達のお父さんが、私を家に呼んでくれたんです。

 その方は、誰もが知る大物弁護士なんですが、貧乏な生まれだったそうで、そこから這い上がるため、必死に勉強して、有名な大学に行って、弁護士になった。本人はじゃがいもみたいな顔だけど(笑)、美人の奥さんがいて、立派な家に住んで、高級車に乗っていたんですよね。その方に、武器を持って戦わなくても、六法全書で戦える世界があるんだってことを教えられたんです。それで法律家になろうって思った。

 だから、私の根本にあるのは、差別してきた連中を見返してやりたいっていう思いと、理不尽なことに対する怒りなんですよ。ちなみに、いじめてきたガキ大将は、30年後くらいに偶然、会ったんですけど、ハゲててね(笑)。目が合うなり、ペコっとお辞儀してきたんで、許すというより、もうどうでもいいやって思いましたね。

 個人的な怒りっていうのは、自分を消耗させてしまいますからね。年を経るにつれ、できる限り公的な怒りしか持たないようにしています。それでも、怒りを世の中に問うってことは、それをよしと思わない連中は、いくらでもいるわけですから。

 私が、改憲論議を主張したら、街宣車が大学に乗り込んできたんですよ。いきなり、研究室のドアがバンッと開けられて。それから、侃侃諤諤の議論をして、お互い疲れてきたときに、“あなた小指ないんだね、俺は5本ないんだよ”って言ったら、そっから、仲良くなっちゃった(笑)。腹減ったから、飯でも行こうやって話になって、最後は、向こうが通っているクラブまで行って(笑)、“おまえが襲われたら、おれが守ってやる”なんてことを言い出すんですよ。

 世の中に、のけ者にされてきた人の気持ちは、痛いほどわかるんですよ。お互いに差別の原体験があるから、信用できるんでしょうね。最終的には、彼の団体の顧問弁護士になってくれって話まで出てきましたよ。

 ここ半年は政治モードでしたけど、本業は、弁護士ですからね。これからは専業弁護士に戻って、ほったらかしにしてしまっていた仕事に、しっかりと腰を据えて取り組んでいきたいですね。

撮影/弦巻 勝

小林節 こばやし・せつ
1949年3月27日、東京都生まれ。68年に慶應義塾大学法学部に入学。74年に同大学院法学研究科に進み77年に博士課程修了。ハーバード大学ロー・スクール客員研究員等を経て、89年から14年まで慶應義塾大学教授を務める。14年より同大名誉教授に。憲法学者として、テレビなどのコメンテーターも務め、著作多数。16年7月の参院選では、『国民怒りの声』を設立し、出馬するも落選。政治活動から身を引き、現在は憲法学者、弁護士として活躍する。

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