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伝説のCIA工作員激白プロの目から見た「アルジェリア人質事件」 vol.1

[週刊大衆2月25日号]

1月の半ばにアルジェリアで起きたイスラム原理主義テログループによる人質事件。犠牲者は日本人が最も多く、10人を数えた。

諸説紛々、「日本人をターゲットにしたのではないか」という情報も錯綜する同事件について、元CIAの偽装工作のスペシャリストであるトニー・メンデス氏を直撃した。
「最初から危険であるとわかっている地域に人間を派遣するときは、まず、それ相応の訓練を受けさせてから、派遣すべきだ。アメリカ人はテロリストのターゲットにされやすいので、他国の人間に比べれば、事前に危機回避の訓練を受けることが多い」

1979年11月、イラン革命の真っ只中――。猖獗を極めるテヘランのアメリカ大使館が、イスラム過激派グループに占拠される事件が起きた。世にいう「米大使館占拠事件」だ。

占拠したのは、イラン政府の密命を受けた武装集団(肩書きは法学生)。このときイラン側にバレることなく、米大使館員6人が脱出し、カナダ大使の自宅にかくまわれた。そこから彼らを国外脱出させるために、当時、陣頭指揮を執っていたメンデス氏が思いついた作戦が、「映画のロケハンを装う」ことだった。

前代未聞の奇策だが、見事に成功。これを映画化したのが『アルゴ』だ。同作は第70回ゴールデン・グローブ賞において、作品賞、監督賞の2冠に輝いたばかりで、3月13日には日本でもDVDが発売される。
「事前訓練の例を挙げるなら、射撃訓練もそのひとつだ。ただし、現地ではどういう武器が入手可能か事前に調べ、実際に、その武器を使って射撃練習をすることが重要だ。アメリカには、民間人にそうした訓練を施す企業、団体があり、日本人でも受講できる。事前の備えこそが重要。いざ、今回のような事件が起きてからでは、すべてにおいて遅い」

CIAの場合、派遣地やミッションの内容によって各人、異なった訓練を施されるという。ただ、中東のように何が起こるかわからない危険な地域に派遣される局員は、徹底した訓練を受けるという。メンデス氏は現役当時、ベトナム、ラオスといった政情不安な国で活動することが多かったため、銃を携帯することが多かったと打ち明ける。

さらに、そうした危険地域に行く際は、車の運転の訓練も必須であるという。
「私の妻もCIAにいたが、彼女でさえもアクセルを思い切り踏んで、ビルとビルの間の狭い道をバックで飛ばす訓練とか、自分の車が前から塞がれた場合、どう対処するか、厳しい訓練を受けている。民間人はここまでの訓練を受ける必要がないかもしれないが、この家(メリーランド州ノックスビル)の近くにも、民間人が運転の訓練を受けることができる施設がある。そういう訓練を受けているだけで、実際に事件が起きたときの生存率は大きく上昇する」

CIAでは、映画『TaKe2』(邦題は『96時間リベンジ』)で描かれたように、万が一、人質にされたときの訓練も受けるという。
「危険な地域で働くときは、自宅から職場に通う道も、同じパターンを使わないことだ。これは常識の範疇。そういうことも社員に教えるべきだ。決まったパターンを使うと、敵に行動パターンを把握されてしまい、待ち伏せに遭う。いくつかのパターンを、ランダムに使いわけることが重要だ」

メンデス氏はCIA在籍当時、「chief of disguise」(偽装工作部のチーフ)だった。某国の本物のIDやパスポートをエージェントが入手してきたとする。すると、それとまったく同じものを別人名義で偽造する。また、『アルゴ』のような偽装工作を考え、実行したり、ありとあらゆる"偽装ミッション"を実践してきた。

本物のIDや紙幣には、様々な偽造防止のトリックが隠されている。しかも、定期的に、それらトリックは変更される。そうした点にも留意するため、メンデス氏のもとには、各国のCIAエージェントが入手したパスポートやIDが頻繁に送られてきたという。
「たとえば、現在使用されているギリシャのパスポートの刻印が、どんなものか知らず、昔の刻印を使うと偽装がバレてしまう。相手の仕掛けた罠を見破るのも、私の重要な仕事だった」

2月24日公開のvol.2に続く・・・。

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