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3.11東日本大震災から2年「その後の被災地酒蔵」 vol.2

[週刊大衆3月25日号]

津波で蔵のすべてを奪われたのは、岩手県陸前高田市の酔仙酒造も同様だった。蔵の建屋や設備に加え、清酒と焼酎合わせて一升瓶90万本分の酒が流出。後に瓦礫の中から、ねじ切れた社名プレートと、ひしゃげた菰樽だけが見つかった。

11年6月に金野靖彦社長を訪ねたとき、絶対に復興してみせると語る合間に、ふと心が他所へ行ってしまうような表情が気になった。絶望なのか、放心なのか、判別できなかった。

しかし、それは杞憂だった。①酒造組合への相談②酒造免許について税務署への相談③金融支援関連の情報収集④得意先対策。
まずは4本の柱を立て、情報の収集に加えて行なうべきことを書き足し、震災の年の末に決まる3次補正予算までに、復興支援関連の情報収集にも奔走した。

それと並行して、一関市千厩の岩手銘醸玉の春工場から蔵と設備を借り、活性原酒『雪っこ』を造り、10月の発売にこぎ着けた。酔仙酒造は一躍、復興のシンボルになっていったのだ。
「岩手銘醸さんの蔵はありがたかったんですが、空調設備がないなど厳しい環境で、当時は漁業用の製氷工場も被災して……。氷を入手するにも苦労した。体力勝負でしたね。でも、この過程で、商品というのは、造り手である社員の気持ちの込もったものなのだと、改めて思いました」

金野さんは社員たちのためにも環境整備を急いだ。折から、被災した中小企業のためのグループ化補助金によって、新しい蔵を作るメドも立った。トヨタ自動車グループのトヨタ紡織からも、復興を手伝えないかと打診があった。
「補助金を受けるにあたって、清酒1本当たりの人件費や原価を徹底管理するようにしました。同時に、トヨタ紡織さんには、工場内の機械の配置や人の動線についてアドバイスをいただきました。そればかりか、工場建設に際しての工程管理の要諦も教わりました」

こうして、3次補正成立から3カ月を経ずして、酔仙の新しい蔵は、水質がよく陸前高田と同じ気仙地方にある大船渡で着工した。
「被災地の中では復興への動きが早かったので建設人員も資材も高騰することなく確保できました。やはり、スピードだなと思います」

昨年8月、酔仙酒造大船渡蔵が完成。案内してもらうと、酒造りをする蔵人の効率と徹底して安全に配慮した設計になっている。
「いま、この蔵で5000石の製造を目指しています。陸前高田のときの3分の1です。売上としては前期が2億6000万円、今期は(6月決算)3憶5000万円を目標にしています。しかし、いま重視しているのは、どれだけ売るかではなく、どれだけ利益を出すかという点。生産面を含めて改善に次ぐ改善をしていくつもりです」

酒造りを通じて、地域の人々とコミュニケーションを図っていきたいと考える金野さんだからこそ、堅実な経営を通じて利益を上げ、地元の雇用創出にも貢献しようとしているのだ。

最後に訪れたのは、宮城県石巻市の墨廼江酒造だ。
酔仙酒造のある大船渡から気仙沼、南三陸といった、いずれも甚大な被害を受けた土地を車で南下し、その光景を見れば、震災から2年を経てなお復興の困難さを思い知らされる。

石巻の被害はさらに大きい。復興までに、いったい何年かかるのか。

3月24日公開のvol.3に続く・・・。

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