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3.11東日本大震災から2年「その後の被災地酒蔵」 vol.3

[週刊大衆3月25日号]

「震災直後もいまも、地元の消費には期待はしにくい。今後もかなり難しいと思います。そのぶん、仙台や県外での売上で凌いでいくしかないでしょう」
こう語るのは、津波によって蔵のすべてを1メートルほど侵された墨廼江酒造の澤口康紀社長だ。

震災後、蔵全体の掃除や設備の入れ替えなど、業者の手配もままならぬ中で改修と復旧を行なってきた。そしていま、9割ほどの復旧にこぎつけたという。
「グループ化補助金で機械等を入れることもできましたし、あとは金融機関からの融資でやりくりしてきました。大変ですが、それはそれで仕方がない。むしろ、震災直後に東北の酒を飲もうという機運が高まって、私たちは救われたと思っているんです」

震災後、澤口さんは酒に対する自粛ムードが起こるのを最も心配したという。
「そんなとき、『南部美人』(岩手県二戸市の蔵)の久慈君が被災地の酒を飲んでくださいと呼びかけてくれた。あれがきっかけでした」

全国の飲食店、居酒屋、個人の消費者が、被災地の酒を飲んで応援しようと動き出した。それが被災地の酒蔵を支えたという。
「注文が入れば酒を売れるんです。そうして売上が上がれば社員の給料も払えるし、米も買える。酒を造れる。これはありがたいですよ。被災地の蔵元はみんな、そう思っていたはずです」

蔵を歩きながら、澤口さんは絞ったばかりの大吟醸酒を試飲させてくれた。香り高く、ふくよかで、それでいて強い、いい酒だ。
「石巻は漁港の街だから、ここで造る酒は自ずと魚介類に合う。そういうことを世界に発信したいですね」

遅々として復興が進まぬ石巻の将来を心から心配しつつ、澤口さんは前を向く。
「1000年に一度という災害を経験したことを嘆いても仕方がない。人生は前を向くしかないと、震災を通じて強く感じるようになりました」

被災地の酒蔵は、甚大な被害と引き換えに、人を激励する酒を造るためのより高い志を得た。その志に敬意を評して、今夜も被災地の酒を飲もう。

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