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現地潜入ルポドミニカ共和国野球「世界最強の秘密」 vol.1

ニューヨークを出発した飛行機が、カリブ海の小国、ドミニカ共和国(以下ドミニカ)の上空に差し掛かると、未開拓の緑地が次々と目に飛び込んできた。その中に、太陽の光で芝が輝く野球場をいくつも確認できる。ドミニカではメジャーリーグ(MLB)の30球団のうち28チームがアカデミー(養成所)を開いており、各チームは2~4のグラウンドを所有している。
「ドミニカはベースボールカントリーだ。よい選手が無数にいる」

こう胸を張るのは、97年から西武、巨人で5年間プレーしたドミンゴ・マルティネスだ。"マルちゃん"が誇るように、人口1000万人のドミニカは12年開幕時点のM LBに、アメリカに次ぐ95選手を輩出。今回のWBCでも大手ブックメーカーbwinが3・5倍のオッズでアメリカと並ぶ本命に推している(2月20日時点)。

WBCで優勝候補に挙げられ、MLBへの人材供給国となっている主な理由をマルティネスはこう話す。
「ドミニカには貧しい人が本当に多い。彼らはなんとかグローブ、バットを手に入れ、アメリカでおカネを稼ぎたいと考える。ほとんどのドミニカ人にとって、野球はおカネを稼ぐための唯一の手段なんだ」

WBCに参加する16カ国の中で、ドミニカの国内総生産は最も低い。観光くらいしか、めぼしい産業のないこの国では失業者が溢れ、廃車寸前の車がガタガタと走る。主要産業のさとうきび栽培は収益が低く、そこで働く家族の子供は学校に通えないことも多い。教育を受けられないため、成人後も単純労働に従事せざるを得ない。"貧困のスパイラル"は根深い。

そこから抜け出す唯一の手段、それがドミニカ人にとっての野球だ。

九州と高知県を足したほどの国土には、至るところに野球のグラウンドがある。多くはデコボコの土のフィールドで、雑草が茂っている。123年の歴史を誇る地元紙『リスティン・ディアリオ』のエクトル・クルス記者はいう。
「ドミニカで男の子が生まれると、最初にするスポーツは野球。バスケット、体操の人気も上がってきているが、すべてのアスリートがまずは野球をやる」

ドミニカにあるMLBのアカデミーは16歳未満の選手との契約を認められておらず、非公式の代理人がそれより若い少年たちを発掘・育成し、彼らがMLBの球団と契約した場合、その家族からマージンを得る。

この代理人の報酬は契約料の10%。契約料は選手によって異なるが、元広島の投手で現在ドミニカのカープアカデミーでコーチを務めるフアン・フェリシアーノによると「300万ドル(約2億7000万円)に達する場合もある」という。

金銭的な恩恵は、暗躍する代理人ばかりが手にするわけではない。中南米にはベネズエラ、メキシコなど野球の盛んな国がほかにもあるなか、なぜ、MLBはドミニカにアカデミーを置くのか。前出のクルス記者が裏事情を明かす。
「彼らはドミニカ政府から税金を免除されている。50人以上の選手を抱える球団では給料がドルで支払われ、所得税を払う必要もない。MLBのアカデミーは、タックス・ヘイブンなんだ」

荒れ果てたグラウンド、貧しい家庭で育ったドミニカ人選手にとって、MLBのアカデミーは夢世界だ。

08年4月、ナハージョに総工費800万ドル(約7億2000万円)で作られたサンディエゴ・パドレスの施設は、6万平方メートルの敷地に芝のグラウンドが2面、内野守備用のフィールド、室内練習場、ブルペンがあり、選手の宿舎はリゾートホテルのような佇まいだ。

サント・ドミンゴ郊外のクリーブランド・インディアンスのアカデミーも、同等の設備を有する。

プロ選手になれば、裕福な生活を送ることができる――目の前にニンジンをぶら下げられた若手選手は、メジャーリーガーを夢見る。2年前にインディアンスと契約し、昨季は2Aでプレーした20歳のドミニカ人遊撃手のマニー・ロドリゲスはこう話す。
「以前は貧乏だったけど、ここに来て人生が大きく変わった。いまは食べ物があるし、おカネを稼いで家族に家を買うこともできた。もっと稼がないと!」

各チームの練習はメジャー式だ。早朝のアーリーワークに始まり、午前中から全体練習が4時間ほど行なわれる。ドミニカのアカデミーにはメキシコ、ベネズエラ、コロンビアら中南米の選手も在籍しているが、総じて抜群の身体能力を誇る反面、プレーの基本動作ができていない。コーチたちは基礎から教えていく。

2月11日、パドレスの練習終了後、投手コーチのジャスティン・ケサダは一人の若手右投手にシャドーピッチングを繰り返させていた。左肩の開きが早い点を修正している。
「ピッチャーにとって最も重要なのはメカニック(フォーム)だ。最高のメカニックを習得すれば、スピード、コントロールがよくなる。だから継続して教えている。ストライクを取り、配球を考えるのは、メカニックがなければできない」(ケサダコーチ)

3月8日公開のvol.2に続く・・・。

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