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新連載●第3回 【想定外のときは「一か八で勝負」】

競馬の王道は、強い馬が強い勝ち方をすることにあります。道中、ひとつ、ふたつの不利は跳ね返し、ファンはもちろん、アンチファンをも納得させ、唸らせるような競馬が理想です。
しかし、

こんなレースが出来るのは一年に数度。見た目には完勝のように映っていても、一か八かの勝負をかけているケースが、両手の指では数え切れないほどたくさんあります。

ファレノプシスをパートナーに臨んだ98年の「秋華賞」も、そのひとつでした。

舞台となる京都競馬場の内回り2000mは、内枠有利とか先行馬有利といわれていますが、決してそうではありません。直線半ばからのスタートで1コーナーまでの距離が短いため、先行争いが激しくなることもありますが、逆に、このことが極端なスローペースを生むこともあるのです。

そのうえ、直線が短いため、3コーナー、4コーナーはゴチャつきやすく、最後まで展開を予測するのは不可能。人気馬で挑む騎手にとっては、気持ちの悪いコースなのです。

直線一気の競馬で「桜花賞」を制し、1番人気に推された「オークス」は力及ばすに3着に惜敗したファレノプシスにとっても、どうしたら、このコースを克服できるのかが最大のポイントでした。

枠順は7枠14番。出遅れたらどうするか。ペースが早くなったらどう対応するのか。レース前、あらゆる想定を頭の中で描き出し、ゲートに入った瞬間、白紙に戻して、スタートしてからもう一度、組み立て直すのが僕の競馬ですが、このとき、想定していた以上にスローペースになってしまったのはちょっとした……いや、かなりの誤算でした。
最後まで真面目なファレノプシス!

どうしようか? 悩んだのは一瞬です。3コーナー過ぎから前に進出し、4角先頭。「最後までもたなかったらしゃあない!」。文字どおり、一か八でした。

このレースで4着に敗れたエアデジャヴーの伊藤正徳先生が、「馬の仕上げは負けていない。ユタカにやられたんだ」と、おっしゃったそうですが、この言葉はいまも僕の勲章として心の中にしまってあります。

競っても、一頭になっても、最後まで真面目に走り切るファレノプシスは、クラス委員長を務めるような優等生タイプでした。

今年、「秋華賞」で僕のパートナーを務めてくれるのは、柴崎勇先生が管理するトーセンベニザクラ(牝3)。小気味のよいレースをする、乗っていて、ちょっと、わくわくするような素質馬です。

牝馬三冠を狙うジェンティルドンナ。最後の一冠にかけるヴィルシーナと上位2頭の強さはかなりのものです。ヨーイ、ドンで勝負をすれば、勝ち目はほとんどありません。

しかし、舞台は何が起こるかわからない京都内回りの2000m。一か八かの思い切ったレースをすることで、光が見えてくるはずです。

王道競馬が騎手の理想なら、ゴール前、アッといわせる競馬もまた騎手にとっての醍醐味です。どうか楽しみにしていてください。

想定外のときは「一か八で勝負」

新連載●第3回 【想定外のときは「一か八で勝負」】

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