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何事にも動じない安藤さんの凄さ

 豊クン。豊さん。豊ジョッキー……その人によって呼び方はさまざまです。負けて帰ってくると、スタンドのお客さんはほぼ呼び捨て。「豊ーッ! カネ返せ?」という声がアチコチから聞こえて来ます(笑)。
 そんななか、ごく稀に僕のことを「豊チャン」と呼ぶ方がいるのですが、先日、引退された安藤勝己さんもその一人でした。
 初めてお会いしたのは笠松競馬場です。そのとき先輩達からいただいたアドバイスが、「アンカツさんには
 

気をつけろ」でした。
 いまでは想像できませんが、若い頃の安藤さんは、かなり尖っていたらしく、教官を殴ったことがあるらしいとか、先輩騎手をド突いたなどなど、様々な武勇伝を持っていたのです。
 ところが、いざ、笠松競馬場に行くと、ニコニコと笑みを浮かべ、いきなり、「豊チャン」ですから、肩透かしを食ったような気がしたのを憶えています。
 ちなみに、一緒に飲んだとき、武勇伝の真偽を伺ったことがあるのですが、「うん、全部、ホントだよ」とのお返事でした(笑)。
 地方で3353勝。JRAで1111勝。重賞81勝のうち、GⅠ勝ちが22。数字を並べるまでもなく、いや、数字以上に、安藤さんは偉大なジョッキーでした。と同時に、僕には理解不能な人でもありました。
 どういう発想をしたら、この馬でこの乗り方ができるんだろうと思ったことは一度や二度ではありません。もしかしたら、どんな馬に乗っても勝っちゃうんじゃないのか? と、背中に冷や汗をかいたことも、何度もありました。
 いま思い返しても、馬に負けたというより、安藤さんに負けたと痛感したレースが数多くあります。

■長い写真判定後に握手を求めてきた

 考え抜いて組み立てた作戦なのに、一瞬のひらめきで、すべてをひっくり返されてしまう  天才という呼び名は、安藤さんにこそふさわしいものでした。
 そしてもうひとつ、僕が憧れて止まないのは、物事に動じない生き方です。勝っても負けても、いつも同じ顔。何事にも動じない平常心は、すごい! としかいいようがありません。
 あれは08年、秋の天皇賞のときでした。僕が乗るウオッカと安藤さんが騎乗したダイワスカーレットの競馬史に残る一騎打ちです。
 10分にも及ぶ長い写真判定の間中、僕は息をするのも苦しかったのに、隣の安藤さんは飄然としたままです。そして、わずか2cmの差でウオッカの優勝が確定した瞬間、安藤さんは、あのいつもの笑顔で、「おめでとう」と右手を差し伸べてくれたのです。
 騎手として、もう一緒に乗れないかと思うと、ホッとした部分もありますが、それ以上に寂しさが募ります。安藤さん、本当にお疲れ様でした。近いうちに、また一杯、やりましょう!
 さて、今週末はヤマニンキングリーと共に挑む今年初のGⅠ「フェブラリーS」(ダート1600m)です。
 安藤さんも驚くような騎乗をお見せしたいと思っているので、ぜひ、競馬場に来てください。

何事にも動じない安藤さんの凄さ

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