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敵だからこそ掴んだオグリの長所

 現場では何度も顔を合わせているけど、一緒に仕事をするのは初めて……という経験をしたこと、ありませんか?
 そういう場合でも、なんとなくでいいから、どんな相手なのか  何が得意?癖は? 性格は? 協調性は? そんなことを知っておくだけで、いざ仕事をするというときに安心感があるし、仕事の結果も違ってくるはずです。
 ましてそれが、どうやったら倒せるかと、レースのたびに頭を悩ませていたライバルならなおさらです。
 90年の第40回「安田記念(芝1600㍍)」。“平成の怪物”オグリキャップとの出会いは、僕の騎手人生に新しい彩りを加えてくれました。

 当時、僕のパートナーは、長距離がスーパークリークで短距離がバンブーメモリー。オグリはそのどちらの路線にも参戦。GⅠの勲章を懸けた前年の「マイルCS」では、とても届かないはずだった位置から猛然とスパートし、ハナ差で僕とバンブーを差し切るという離れ業を見せた、憎んでも憎み切れない、最強で最大の敵でした。
 でも、だからこそ、またがる前からオグリのことは、なんとなく?んでもいたのです。それは、右回りのコースに比べ、左回りではコーナーで少し置かれるというか、減速するような感じになることでした。
 そう、彼は右脚を手前にして走ることが好きなタイプの馬だったんです。
 しかし、「安田記念」が行なわれる東京競馬場は、左回りです。そこで、思いついたのが、内埒沿いを走ることでした。オグリに埒の曲線を見せ、埒に頼らせながら走ることができたら、スムーズにコーナーを回れるはずだと。

・ゴールした瞬間に過去の負けを納得

 5枠9番  外枠を引いていたらちょっと難しかったかもしれません。運にも恵まれ、レースは思い描いていた通りに運びました。
 減速せず最後のコーナーを回ったオグリは、最後の直線、馬なりのまま先頭に立つと、それまで、僕が何度も負けていた脚を見せつけるように繰り出し、コースレコードで僕に初Vをプレゼントしてくれました。
 調教時からテレビカメラ、新聞記者に追い回され、尋常じゃない雰囲気の中でのレースでしたが、やはり名馬の背中は、ひと味もふた味も違っていました。
 とにかく速くて、強い。成績だけを見たら、オグリに近い成績を残している馬もいますが、見る者も乗る者もあれだけ惹きつけた彼は、正真正銘の怪物でした。
 特に、最後の脚の凄さは、何度も見せつけられ、わかっているつもりでしたが、ゴールした瞬間、「こりゃ、いままで負けてきたはずだわ」と、妙に納得したのを覚えています(笑)。
 今年、この「安田記念」で僕のパートナーを務めてくれるのは、昨年のGⅠ「マイルCS」ウィナー、サダムパテック(牡5)です。
 前走、5月11日に行なわれたGⅡ「京王杯スプリングC」では7着に敗れましたが、ここが本番。09年ウオッカで勝って以来の勝利を目指します。

敵だからこそ掴んだオグリの長所

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