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致命的な怪我から復活した名馬

 仕事をしていれば、日々、小さなアクシデントは起きます。電車が止まった。誰かが遅刻した。注文の品が届かない……腹は立つでしょうが、一つひとつに文句をいっていては、一向に仕事は進みません。
 競馬も同じ。スタートで出遅れる。勝負どころで前が塞がる。スパートをかけた瞬間に、前の馬がよれる……毎レース、必ずどこかで何かが起こっています。
 そんなマイナス材料を想定し、実際、アクシデントが起きたときにどう立て直すか。それも、騎手にとっては重要な仕事のひとつだといってもいいでしょう。
 

 しかし、仲間の誰かが病に倒れるのと同じで、馬の故障はまったくの想定外。ひとつの負けを引きずらないメンタルの強さは持っているつもりですが、大切なパートナーが故障したと聞かされたときは、とても平静ではいられません。
 見る人に衝撃を与えたディープインパクトと同じ時代、同じオーナー(金子真人氏)によって見出され、二度の「ジャパンカップダート」制覇をはじめ、7つのGⅠ勝利を挙げたカネヒキリもそんな一頭でした。
 僕が彼とコンビ結成したのは、デビュー5戦目……2005年3月26日に行なわれたGⅢ「毎日杯」から。
 残念ながら、この芝のレースでは7着に大敗しましたが、ダート路線に戻した次のオープン「端午ステークス」から、彼の快進撃が始まったのです。
 芝でもダートでも強かったクロフネは別格としても、芝とダートで、あれだけ走りっぷりが違う馬はなかなかいません。3歳時に地方交流GⅠ「ジャパンダートダービー」「ダービーグランプリ」を連勝。
 この年の11月に行なわれた「ジャパンカップダート」では、ゴール手前で、横山典弘騎手騎乗のシーキングザダイヤ(牡4)、K・デザーモ騎手騎乗のスターキングマン(牡6)と火の出るような激しい叩き合い。
 長い長い写真判定の末、ハナ差競り勝った勝負根性は、彼の真骨頂でした。
 そのカネヒキリが不治の病といわれる重度の屈腱炎を発症したのは、翌年の夏のこと。聞いた瞬間、突然、闇の中に放り出されたような感覚に襲われました。
 それから2年4カ月。二度の移植手術を経て、不屈の闘志でターフに帰ってきた彼を見たときは、思わず、目頭が熱くなりました。
 これこそ、まさに、奇跡の復活でした。ヴァーミリアンとのコンビで、彼に首差敗れた交流GⅠ「東京大賞典」は、悔しいような嬉しいような、複雑な気持ちだったのを思い出します。
 今週末、東京競馬場で行なわれるGⅢ「ユニコーンS」(ダート1600㍍)は、カネヒキリが初重賞を勝った思い出のレース。
 パートナーは、サウンドアリーナ(牝3)です。「端午S」からという路線も同じ。初ダートで見せた爆発力も、なんとなくカネヒキリを彷彿とさせます。
 ここをすんなり勝つようなら、この秋、彼女がダート戦線の主役に躍り出る可能性もが大です。楽しみにしていてください。

致命的な怪我から復活した名馬

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