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ムチを入れずにGⅠ勝ちした名牝

本気で追ったら、どこまで伸びるんだろう。

ほぼ一年中……多いときには1000近いレースに跨っていますが、そんなふうに、騎手の心をわくわくさせてくれる馬はなかなかいません。
『持ったままで快勝!』
スポーツ新聞や競馬専門誌にそんな見出しが踊るのは、デビュー戦か、2戦目くらいまで。ステージが上がり相手が強くなると、最後の最後まで必死に馬を追い、それでも、ハナ差やクビ差ということがほとんど。直線半ばあたりで勝利を確信し、ムチを使わずに勝った……という経験は、名馬と呼ばれる馬の中でも数えられるほどしかいません。
そんな競馬の常識を覆したのが、デビューから6戦無敗で、“最強の牝馬決定戦”「エリザベス女王杯」を制したファインモーションでした。
 

デビュー戦は、抜群のスタートからそのまま逃げ切り。最後まで手綱は持ったままで、後続に4馬身差の圧勝でした。
「どんな競馬でもできそうな素晴らしい馬」
というのが、最初に僕が彼女に抱いたイメージでした。彼女を管理する伊藤雄二先生が、フランスのオークスへ出走させようというプランを持っていた……というのも、なるほどと、うなずける話です。
しかしその後、骨折というアクシデントもあり3歳春は全休。夏に復帰した彼女は、松永幹夫騎手(現・調教師)をパートナーに、古馬や牡馬を相手に函館の500万下を5馬身差で勝利。続く札幌の「阿寒湖特別」(芝2600m)でも再び古馬、牡馬を相手に5馬身差で優勝。
休み明け3戦目となったGⅡ「ローズS」(芝2000m)でも後続に3馬身差をつけ、秋のGⅠ戦線におけるトップコンデンターとして勇躍、名乗りを上げたのです。

僕が彼女と再びコンビを組むことになったのは、3歳牝馬、最後の一冠、「秋華賞」(芝2000m)のときでした。
前日売りの単勝オッズは、1・0倍(最終的には1・1倍になりましたが)。負けられないという気持ちと同時に、「どこまで強くなったんだろう?」という期待で、本番が待ちきれなかったことを思い出します。
結果は……ムチを一発も入れていないにもかかわらず、僕の想像を超える加速で優勝。古馬牝馬の一線級が待つ、「エリザベス女王杯」へと駒を進めました。

今回は、全力で追ってほしい。

初めて伝えられた伊藤雄二先生の指示に、一瞬、背中がゾクリとしたのを覚えています。
ほんまもんのお嬢様で、厩舎スタッフからも、“お嬢”と呼ばれていたファインモーション。受胎するのは医学的に難しいとの理由で、産駒を残すことはできませんでしたが、彼女の魅力はいまも色褪せることなく、ファンの心のなかで生き続けています。
今年で38回目となる「エリザベス女王杯」……彼女の魂とともに、緑の絨毯を駆け抜けたいと思います。

ムチを入れずにGⅠ勝ちした名牝

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