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絶望を希望に変えた 三陸鉄道の奇跡「知られざる感動秘話」 vol.01

[週刊大衆03月24日号]

2011年3月11日14時46分――
大地震が東日本を襲った。

あれから3年。
地元住民にとって復興の象徴である三陸鉄道が、4月6日、震災前と同一ルートで全線復旧する。

三陸鉄道と言えば、NHK朝ドラ『あまちゃん』の舞台になった北三陸鉄道(北鉄)のモデル。
岩手県の「久慈(くじ)-宮古」(北リアス線)、「釜石-盛(さかり)」(南リアス線)間を運行する小さな鉄道会社(第三セクター)だ。

地元では"三鉄"と呼ばれ親しまれるものの、経営状態はかなり厳しい。
震災前の決算では1億3500万円の赤字。
そのうえ、震災で線路はねじ曲がり、駅舎や橋も津波で流された。

同じく三陸海岸を走るJRが復旧に遅れを取るなか、なぜ小さな赤字会社が、わずか3年で完全復旧を遂げたのか。そんな"奇跡"とも言える復活劇の陰には、さまざまな感動秘話が隠されていた……。

その奇跡は、すでに震災の直後から始まっていた。
震災当日に、三鉄マンが最優先したのは、乗客と全従業員の安否確認だったのだが、宮古の本社は停電の影響で電話やパソコンが使えない。
三陸鉄道旅客サービス部長の冨手淳氏は、「宮古駅を(15時7分に)発車する予定だった車両が1両残っていましたので、そこを前線本部にしました。電車は架線から電気を取る必要がありますが、三鉄の車両はディーゼルエンジンを搭載しています。まず電気を確保できたことが大きかったと思います」
もし地震の発生が30分遅れていたら、この車両もどこかで被災し、前線本部は機能しなかったはずだ。

翌々日の13日には大津波警報が解除。
冨手部長が線路の確認に行こうとすると、「社長が同行すると言いました。国道はガレキで寸断されていましたが、社長が被害の少ない山道を知っていたので迂回して進みました。ところが、被害の状況がわかるにつれ、社長と2人で、呆然とするしかありませんでした」(前同)

ここで思い起こすのが、『あまちゃん』で、北鉄の駅長・大吉に扮する杉本哲太がガレキに埋もれた線路を見て、「走れるかどうかでねえ。走らなくちゃなんねえのだ」と呟くシーン。

実は、視察の際、三鉄の望月正彦社長は、ある決意を述べたのだ。

「宮古駅から田老(たろう)駅までは山間に位置していたため、予想どおり、線路は傷んでいませんでした。すると、その場で社長は"走らせられるものなら、走らせたい"と呟いたんです。私も同意見でした。すぐ会社に戻り、線路の状況を報告しました。社内では"走らせるのは危険だ、何かあったときに責任が持てない"という声もありました。岩手県からも"JRも走っていないのに、なんだ!"と言われました。しかし、社長が知事に直談判し、時速25キロで走らせるということで了承を得たのです。最終的には走らせたいという社長の熱意が反対の声を上回ったんだと思います」(冨手部長)

こうして震災から5日後の16日、「久慈-陸中野田」間で列車を走らせた。
しかも、赤字経営であるにもかかわらず、『復興支援列車』として3月中は運賃を無料にした。
「三鉄は第三セクターですから、地元の企業などからおカネを出資してもらっています。地域の方々が困っているときに、おカネを取るわけにはいきません」(望月社長)

もちろん、電気ケーブルは切れたままなので、踏切では社員が信号用の手旗を振って安全確認をした。

また、震災直後はガレキで道路が歩けず、線路上を歩く住民も多くいた。
そのため、線路内に人がいては危険だからと、汽笛を鳴らしながら運行した。
すると、三鉄が走っていることに気づいた住民が沿線に駆け寄り、列車に手を振り始めるではないか……。

その時、同乗していた三鉄マンは涙が止まらなかったという。
"三鉄が走っている"という当たり前の日常がまた戻ってきた。
運転再開は、そんな安心感を住民に与えたのだ。

「津波で流された自宅へ思い出のアルバムを探しに行く人、避難所で暮らす年老いた母親の薬をもらいに行く人……いつしか三鉄は絶望を希望に変える、復興のシンボルになっていきました」(地元紙記者)

そして、4日後に「宮古-田老」、その9日後には「田老-小本」間と再開区間を増やしていった。
「4月に入ると、18日と19日の両日に沿線8市町村すべてを回り、三鉄の復旧方針を説明しました。"三次計画で3年以内に全線復旧させる""ルートは変更しない"という内容でした」(望月社長)

赤字ローカル鉄道としては無謀な計画に思えるが、三鉄関係者は異口同音に、「街が活性化するには、バスより鉄道が大切――常にそう考えている社長の熱意が周りを巻き込んだ結果でしょう」と言う。

実際に社長の言葉どおり、約3年で全面復旧させるわけだが、その道のりは険しいものだった。

03月19日公開のvol.02に続く・・・。

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