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映画『永遠の0(ゼロ)』公開直前specialワイド「奇跡の戦闘機」零戦かく戦えり! vol.01

[週刊大衆12月30日号]

なぜ、日本人はゼロ戦に魅了されるのか?
それは、ゼロ戦が旧・日本軍の誇りと悲しみの象徴であるからに他ならない。
この不世出の戦闘機は、登場するや連合国軍から「ジーク」として恐れられ、最後は特攻隊員とともに戦火の空に散っていった――。

今月21日から公開される映画『永遠の0』にちなんで、戦後68年経ってなお、人々を魅了し続ける【奇跡の戦闘機】と、その搭乗員たちの勇姿に肉迫した!
※※
誰もが不可能と思われたことを可能にした――ゼロ戦開発の成功は、そのひと言に尽きるだろう。
そして、それは、主任設計者・堀越二郎の苦悩と天才的な閃きの賜物であった。

海軍が堀越に命じたのは、世界最強の戦闘機を造ること。
そのため海軍の要求は、空戦性能、速度、航続距離のそれぞれについて最高レベルを求めていた。

堀越は、のちに刊行された手記で、この無茶な要求について、こう述べている。
〈たとえていえば、十種競技の選手に対し、五千メートル競走で世界記録を大幅に破り、フェンシングの競技で世界最強を要求し、その他の種目でも、その種目専門の選手が出した世界記録に近いものを要求しているようなものだった〉

しかも、これらの条件のそれぞれが互いに相反しているのだ。
空戦能力の高さのポイントは、上空でいかに小回りが利くかだが、それには機体の軽さが求められる。

一方、速度を上げるには高馬力のエンジンの搭載が必須で、機体が大きく重くなってしまう。
この2条件だけでも十分矛盾しているのに、海軍はさらに航続距離を2倍にしろというのだ。
「さらに、ゼロ戦には、当時の常識では考えられない20ミリの機銃が搭載されていました。当時、他国の戦闘機の機銃は最大で12・7ミリ。20ミリ機銃と比較すると、中高生のアマチュアボクサーとプロほどのパンチ力の差と言えます」(軍事ジャーナリスト・神浦元彰氏)

さすがに堀越も、どれかひとつでも条件を引き下げてほしいと軍に掛け合ったが、答えはノー。
苦悩の末、堀越が出した結論は、ゼロ戦の軽量化を徹底することだった。

堀越自身が〈重量は1グラムたりともないがしろにできなかった〉と手記で語っているように、その徹底ぶりは凄まじい。
全重量の10万分の1レベルまで設計を管理する方針を貫き、3000枚を超える図面の細部に至るまでチェック。
その都度、部下にダメ出しをしたという。

軽量化の取り組みは図面上だけではない。
機体には当時開発されたばかりの超軽量ジュラルミンを使用。

さらに、強度が保てる範囲内で、機体のあちこちに穴をあける「肉抜き」と呼ばれる加工を施した。
また、世界で初めて落下式燃料タンクを採用したことも軽量化にひと役買った。
この増槽タンクはいざ戦闘に入るときに切り離し、高い空戦能力を確保するためだ。

ゼロ戦のこのアイデアは、その後、あっという間に世界の常識になったという。

だが、こうした超軽量化は最大の弱点をも作ることとなった。
「パイロット席の防弾性能が低く、燃料タンクを保護するゴム板もありません。機体の強度や安全性を極限まで削ぎ落とした結果です。不時着したゼロ戦を分解したアメリカ軍人が"クレイジー、こんなんじゃあ、アメリカ軍のパイロットは誰も乗りたがらない"と言ったという逸話もあります」(前出・神浦氏)

この点では、堀越も葛藤したようで、〈軍から防御の指定はなかった〉と、手記で苦悩を告白している。

もっとも、これらの努力と犠牲だけでは、ゼロ戦は生まれなかっただろう。
完成までのあと一歩には、堀越の天才的閃きが必要だったのである。

試作機ができてテスト飛行をすると、高速と低速で操縦桿の効きが違い過ぎる問題が噴出した。
重要視した空戦性能に関わる大問題だった。

これに対して堀越は、大胆な発想の転換でもって応える。
当時、操縦系統が伸び縮みしやすいことは"悪"とされたが、あえて操縦系統に弾性を持たせたのだ。結果、これが功を奏し、ゼロ戦は世界に類を見ない操縦しやすい機体となった。

ちなみに、堀越のこの発想は戦後になって、やっと認められている。
かくして完成に至ったゼロ戦は、1940年9月13日、中国・重慶上空でデビューを飾る。

その日、13機のゼロ戦は中国軍の戦闘機27機に襲いかかり、あっという間にすべてを撃破。

ゼロ戦伝説の始まりであった。

12月24日公開のvol.02に続く・・・。

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