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緊急対談 吉井理人×福島良一「田中将大は何勝するのか?」 vol.02

[週刊大衆03月24日号]

吉井:腕の振りは速いけれど、ボールは来ない……これで打者はタイミングを外されます。
僕がメッツに入った頃、エースのボビー・ジョーンズは「打者のバットスピードを狂わせる」という表現の仕方をしていましたが、まさにそれこそが究極の変化球。
僕もメジャー1年目のスプリングトレーニング(春季キャンプ)で、チェンジアップを覚え、夏頃からかなり使っていました。
メジャー晩年は、チェンジアップのほうが得意になったくらいです。

――速球はどうでしょうか。
田中のようなきれいな回転のフォーシーム(※2)を投げる投手は、メジャーでは少数派だと思うんですが。

福島:メジャーはツーシーム(※3)やカットボール(※4)など、手元で微妙に動く速球が全盛ですね。
黒田もこうしたボールを両サイドに投げ分けることで成功しています。
ダルビッシュも、昨シーズン前半はフォーシームをほとんど投げませんでしたが、後半からは逆に多投していましたね。

吉井:ダルビッシュには、そのほうが合っていると思います。
ツーシームはボールを変化させようとするため、フォームを崩しやすい。
それと、メジャーにはフォーシームを投げる投手は珍しいので、打者は目が慣れていません。
それだけ投手有利に働くはずです。
僕もメジャー時代、速球の7割はフォーシームで、3割がツーシームでしたが、けっこうフォーシームで打ち取ることができました。
ただ、僕はフライアウトが多かった。
しかし、マー君はフライよりゴロで打ち取ることが多い投手です。
しかも奪三振も多い。
データ的にはこういう投手ほど点を取られません。
僕はフライが多くて、奪三振も少ないから、点を取られることも多かった(笑)。

福島:ヤンキースは、田中の能力について、そうした細かいデータまで分析したうえで獲得したんでしょうね。
本拠地ヤンキー・スタジアムをはじめ、ア・リーグ東地区は外野の狭い打者有利の球場が多い。
フライがそのままスタンドに入ってしまう危険性があります。

吉井:僕は旧ヤンキー・スタジアムでしか投げた経験はありませんが、確かに、ライト方向の打球がよく飛んだのを憶えています。

福島:09年に開場した現在のヤンキー・スタジアムは旧スタジアムとまったく同じサイズですが、風の影響でライト方向への打球は以前より伸びますね。
開場1年目、ホームの本塁打数がロードの1・5倍だというので話題になりました。
なので、田中に対しては相手チームが左打者を並べてくることも考えられますね。

吉井:左打者を抑えるには鋭く落ちるスプリッターが有効だと思います。
問題はスライダー。
実は、日本時代のマー君を見ていて唯一の弱点だと思ったのが、右打者に投げるスライダーでした。
カウントを取りにいったスライダーが、高めの甘いコースに入ることがときどきあるんです。
同じボールをメジャーリーガー相手に投げたら、間違いなくやられますよ。

福島:ア・リーグにはロンゴリア(レイズ)、エンカーナシオン(ブルージェイズ)といった右の強打者も多いですからね。

吉井:警戒すべきは右の強打者。
逆に、左打者は高めのスライダーはファウルにしかできないので問題ないと思います。

福島:吉井さんが、パワー以外で日米の打者の違いを感じた点はありますか。

吉井:ブレーブス時代のアンドレス・ガララーガに2ストライクに追い込んでから、低めに決まった最高のチェンジアップを本塁打されました。
これはショックでしたね。
日本の打者は追い込まれたら、速球にも変化球にも対応できるタイミングで待つんですが、メジャーの打者は2ストライクになっても、狙い球を絞って強振してきます。

福島:確かに三振することを恐れない。
田中もその怖さを経験するはずです。

――ほかに不安要素は?

福島:やはり、ニューヨーク・ヤンキースという名門でプレーする重圧ではないでしょうか。
過去に多くのスター選手が鳴り物入りでやってきましたが、本当に成功したと言える選手はひと握りです。
注目度が高く、メディアもファンの目も他球団とは比べ物にならないくらい厳しい。
あえて、そうした環境でプレーする道を選んだ田中の自信と覚悟は評価しますが……。

吉井:僕がメッツにいた頃、移籍してきたケニー・ロジャースが「2度とヤンキースには行きたくない」と言っていましたよ(笑)。
ニューヨークをすっかり嫌いになったらしく、メッツもすぐに去りました。

福島:レンジャーズで完全試合を達成した左腕ですね。
彼もヤンキースでは期待外れに終わり、メディアに散々叩かれました。
吉井さん自身は、ニューヨークならではの苦い経験をされたことはありませんか。

吉井:不調が続いて地元ファンからブーイングを浴びたことがあります。
そのときは、「クソッ、日本に帰ったろうか」と思いましたよ。
でも、マー君のように大金をもらって長期契約を結んでいたら、帰るわけにもいかないですね(笑)。

※2「フォーシーム」人差し指と中指の2本の指が、ボールの縫い目に4カ所触れる握り。
日本で言う「ストレート(真っすぐ)」。変化が少なく球威がある。

※3「ツーシーム」人差し指と中指の2本の指が、ボールの縫い目に2カ所触れる握り。フォーシームより球威は落ちるが、変化は大きい。

※4「カットボール」フォーシームの握りを少し変化させ、リリース時にボールをカットさせるようにスナップする。ツーシーム以上に、打者の手元で変化する。

03月19日公開のvol.03につづく・・・。

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