日刊大衆TOP 社会

実娘告白 零戦パイロット坂井三郎氏の素顔「家族と空を愛した撃墜王」 vol.01

[週刊大衆12月23日号]

12月21日、映画『永遠の0(ゼロ)』が全国公開される。
現代の青年が、戦争中に特攻で亡くなった祖父の生き様を、かつての戦友たちを訪ね、知っていくというこの映画。

原作は百田尚樹(ひゃくたなおき)氏のベストセラー同名小説だが、そこに実名で登場する実在のパイロットがいる。

【撃墜王】と称された坂井三郎海軍中尉がその人だ。小説では坂井さんが、敵機に撃たれ、目もほとんど見えず右腕しか使えない状態で、数時間かけて基地に戻ってきたエピソードなどが紹介されるが、これはすべて本当にあった話なのだ。
「父は、ポートモレスビー敵戦闘基地上空(パプアニューギニア)で、仲間2機とともにアメリカ軍の前で3機編隊宙返りをして見せたことがありました。父はあとで上官にきつく叱責されたのですが、後日アメリカの飛行機から〈大いに気に入った〉と英語で書かれた手紙が基地に投げ落とされたんです。『永遠の0』にも登場するこの話を父は"戦争中でもこんな風も吹くんだ……"と言って著書にも書いています」

こう語るのは、坂井スマート道子さん。
現在、ハワイ在住の道子さんは、2000年に亡くなった坂井三郎さんの娘である。
彼女は、「大空のサムライ」だった父の生き方を伝え続けようと、昨年『父、坂井三郎』(産経新聞出版)という本も出版している。

今回、道子さんは本誌だけに、伝説の撃墜王の知られざる素顔を語ってくれた。
「父が太平洋戦争で空戦を共にした戦闘機が、当時"世界最強の戦闘機"とも言われた零戦です。父は戦後、零戦の設計者の堀越二郎さんとおつき合いするようになり、設計者とパイロットという関係を超えた交流をさせていただきました」

堀越二郎氏は、現在の三菱重工で零戦を設計した航空技術者で、今夏話題になった宮崎駿(はやお)監督のアニメ『風立ちぬ』の主人公のモデルにもなっている。
「零戦の優れた点は、なんといっても長い距離を飛べる航続力でした。これがあったから、遥か遠くの戦地まで飛んで行き、戦うことができたんです。しかし、操縦には非常に敏感な技量が必要だった。試乗の際の第一印象について、父は"なんと操縦しにくい飛行機かと思った"と言っていました」

だが、坂井さんはほどなく自分の手足のように零戦を操るようになる。
堀越氏が開発した「剛性低下方式ケーブル」の仕組みを理解し体得できたからだという。

空を飛びたくて飛びたくて飛行機乗りになった彼にとって、大空は最も自由になれる場所でもあった。
そして当時、20代前半の坂井さんと同様に、若きパイロットたちが戦地の大空を駆け、国や愛する家族を守るために戦っていた――。

戦後、坂井さんは、家族の行く末を見届けることができなかった戦友たちの分も引き受けるかのように、子供である道子さんたちに愛情を注いだという。
「父は幼い私に対して、決して子供扱いはせず、"必要だ"と思ったことは、なんでも真剣に教える人でした。まだ私が小学生のとき、ゴルフに熱中した父は私にも教えてくれたのですが、正しいグリップの持ち方や球を飛ばす原理を理論的に教えた上で、"とにかく打ってみろ。身体でわかる瞬間があるから"と言うのです」

また、危険を避けることに真剣で厳しく、道子さんは自転車の乗り方は訓練されたものの、路上で乗ることは許されなかった。

一方で年齢に応じて小刀や彫刻刀を与えられ、使い方も特訓されたという。
「戦争中は自力で怪我を治していた父は、傷の治し方には一家言がありました。私が怪我をすると、待ってましたとばかりに、嬉々として手当ての方法を教えてくれたものです」

毎朝、目が覚めると、「今日も元気で起きられたことに感謝します。今日ももりもり働きます」と唱え、家族にも奨励していた坂井さん。
道子さんはいまでも、その習慣を守っているという。

しかし、思春期の頃は、何かと軍隊調で口うるさい父の躾(しつけ)に「そんなの、やってられないわ」と反発を覚えたこともあったという。

ベトナム反戦運動と、70年安保闘争の時代、高校生になった道子さんは政治集会や反戦デモにも参加するようになり、政治的な考えを巡って父と言い合いになることもあった。
だが、道子さんが2~3日、家を空けても頭ごなしに問い質されるようなことはなかったという。無事に帰ったことが最も肝心だったからだと、後に聞いた。
「父自身、若い頃は反骨心の塊のような人だったそうで、健康な若者なら、どの時代でも、既成社会や体制に反抗するのが自然なのだ、と考えていました。だから、私にも反抗させてくれていたのだと、親になってから本当にわかりました」

12月17日公開のvol.02に続く・・・。

この記事が気に入ったら
をしよう

いいね!

@taishujpさんをフォロー

大衆のオススメ


オススメタグ


人気記事ベスト10


日刊大衆公式チャンネル


Copyright(C) 日刊大衆 Futabasha Publishers Ltd. All rights Reserved.