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桜の季節に名馬の走りを思い出す

僕が初めて"ダービージョッキー"の称号を手にしたのは、98年の第65回「日本ダービー」でした。
パートナーは、スペシャルウイークです。

93年は、「皐月賞」を制したナリタタイシンで3着。
96年はダンスインザダークで2着。
ともに悔しさが残る結果に終わりましたが、2頭とも、何かひとつ違っていれば、ダービー馬になれる力がありました。

そしてもう一頭、「故障さえなければ……」と思っているのが、大種牡馬、サンデーサイレンスの初年度産駒、マーベラスサンデーです。
彼は、スペシャルウイークが登場する前に、大きな夢を抱かせてくれた"幻のダービー馬"でした。

デビュー前に右膝を骨折。
さらに放牧先で、一時は関係者が死を覚悟したほどの腹痛を患いましたが、その能力はずぬけていました。

大幅に遅れた初戦は、95年2月4日距離1800メートルのダート戦。
クラシックに間に合うかどうかというギリギリのタイミングです。

結果は2着に1馬身3/4差での勝利。続く2戦目、500万下の「ゆきやなぎ賞」(芝2000メートル)も力の違いを見せつけて連勝。

この時点で、僕の中では、「この馬ならダービーを取れるかも」から、「この馬とダービーを取りたい」に変わっていました。

ところが、「毎日杯」に登録したあと、再び右膝を骨折。
復帰するまでに1年1か月の長期を有し、僕とマーベラスサンデーのクラシックは幻のまま終わってしまったのです

この年、「皐月賞」を勝ったのはジェニュイン。
ダービー馬となったのはタヤシツヨシ。
「菊花賞」を制したのはマヤノトップガン。

勝負ごとなので、結果はどうなっていたのかはわかりませんが、「この中に、マーベラスサンデーがいたら……」と、レースのたびに考えてしまいました。


このマーベラスサンデーが、97年の春初戦として選んだのが、今週末、阪神競馬場を舞台に行われるGⅡ「産経大阪杯」でした。

――勝つだけじゃ物足りない当時、3強と呼ばれながら、一度も勝っていなかったサクラローレルとマヤノトップガンを意識した強い競馬で勝ってほしい。
それが僕とファンの共通した思いでした。

そして、マーベラスサンデーは、その思いに応え、文句のない勝ち方で5個目の重賞を勝ち取ってくれたのです。

サクラの花が満開を迎えるこの時期、僕は決まって、マーベラスサンデーの走りを思い出します。

今年、このレースで僕のパートナーを務めてくれるのは……みなさん、お待たせしました、昨年のダービー馬、キズナです。

このレースには、「菊花賞」を勝ったユーイチ(福永祐一騎手)のエピファネイア、「オークス」「秋華賞」「エリザベス女王杯」とGⅠを3つ勝った幸四郎(武幸四郎騎手)のメイショウマンボも出てきます。

しかし誰が出てこようと、キズナはキズナのレースをするだけ。
満開のサクラの下で、みなさんに、最高の走りをお見せします。

■武豊 プロフィール
1969年3月15日、京都生まれ。1987年の騎手デビュー以後、通算3500勝、日本人騎手初の海外GI制覇、年間200勝突破など数々の金字塔を打ち立て、現在も活躍中。

桜の季節に名馬の走りを思い出す

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