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【武豊】クセのある馬を御して重賞勝ち

 クセ者といえば、長嶋茂雄元監督に直々に命名された元木大介さんが有名ですが、サラブレッドにも数多くのクセ者がいます。
 忘れられた頃に突然好走する馬や、展開がハマれば走る馬……数え上げたらきりがありません。09年の「京都牝馬S」を勝った荒川義之厩舎の
 

チェレブリタも、そんな一頭でした。

 追い込んでは届かずの競馬が続いていた彼女の評価は6番人気。レース当日、先生からいただいたアドバイスは、「左右に馬を置くと闘志を燃やすので、道中は挟まれた感じで走ってくれれば」というものでした。
 言葉にすると簡単そうですが、いかにも挟まれているように思わせながら、実は挟まれずに走るには、インに潜り込む大胆さと、他馬と接触しない繊細さが同時に要求される高難度の技術が必要です。
 前年、11月の落馬による事故で右尺骨を骨折、驚くほどの回復力で、わずか28日後に現場に復帰できたとはいえ、冷たい風が吹くと右手首が痛む僕にとっては、かなりハードルの高いレースとなりました。
 道中は後方2番手でじっくりと脚をため、4コーナーを回って迷わずインへ。左右に馬を置きながら、シャーベット状の土が顔めがけて飛んでくるのにも耐え、とにかく他馬とぶつからないよう細心の注意を払いながら必死で追う  いま思い出しても、心が震えるようなレースでした。
 最後の直線は圧巻の一語です。作戦どおり左右に馬を置いたままGOサインを送ると、馬群を割るようにして飛び出し、あとはゴールまで一直線。京都競馬場の吹きすさぶ寒風をものともしない熱い走りで、重賞制覇を成し遂げました。
 レース後のインタビューで、「もう右手は大丈夫。ステッキもバンバン振れます」と強がりをいいましたが、内心では寒さと痛さで顔を思いっきりしかめていたことも、いまとなってはいい思い出です(笑)。

【1月~2月の間は寒さとの戦いです】

 年中無休の競馬は、1月中盤から2月にかけて、一年で最も寒く辛い季節に突入します。
「騎手の人は寒くないんですか?」
 たまにファンの方に質問されます。正直にいえば、寒いものは寒い! 体にも心にも優しい4月、5月と同じ騎乗手当はおかしいやろう。寒さ手当をプラスしてほしいと思っている騎手がほとんどです(笑)。
「昨日買ったアンダーウエア、結構、温かいっすよ」
「エッ、マジで? どこで買ったの? オレも明日、買いに行こう!」
 先輩、後輩を問わず情報交換をして、少しでも温かいアンダーウエアを着込んだり、ズボンの裏地を替えたり、涙ぐましい努力を重ねていますが、それでも、天を呪いたくなります。
 こんな騎手の冷たい体を溶かしてくれるのは、馬の頑張りとファンの方の熱い声援です。
 アメニモマケズ、サムサニモマケズ・・・全騎手が一丸となって最高のパフォーマンスをお見せしますので、ぜひ競馬場に足を運んでください。

【武豊】クセのある馬を御して重賞勝ち

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