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【武豊】馬を信じ、覚悟を決めるのが作法

 今回は、小悪魔のような魅力を持った女の子の話をしましょう。
 僕が彼女に出会ったのは、野茂英雄さんが、メジャーリーグで日本人選手として初めてノーヒットノーランを達成した96年。小倉競馬場で行なわれた新馬戦でした。
 7馬身差の圧勝という結果もそうですが、スピード、センス、潜在能力……どれを取っても超一級品です。
「彼女はほかの誰にも渡したくない」ジョッキーとしての本能がそう叫んでいました。そうです、これが、『日本初の海外GⅠ勝ち馬』、フランスのGⅠ「モーリス・ド・ギース賞」を制した
 

シーキングザパールとの恋物語の始まりです。

 続く2戦目……中山競馬場で行なわれた新潟3歳Sは、いま思い出しても冷や汗が流れます。大きく出遅れたうえに、突然、鞍上の僕を完全に無視して、外ラチに向かって一直線。

「ウソやろう!」

叫んだときには、もう目の前に外ラチが迫っていました。
 レース後、恥ずかしさを隠すために、「ゲートを出てから弁当を買いに行ったみたい」とコメントしましたが、騎乗していて、あのときほどゾッとしたことはありません(笑)。
 4歳時の快進撃は、文字どおり向かうところ敵なしでした。「シンザン記念」を皮切りに「フラワーC」、「ニュージーランドT4歳S」と3連勝。続く、GⅠ「NHKマイルC」でも優勝。誰もが羨む相思相愛の仲だったと思います。
 好事魔多し。気管と食道の間の弁がくっつく喉頭蓋エントラップメントで喉の手術を余儀なくされたのは、さらなる飛躍が期待された4歳の秋でした。
 手術は無事に成功したものの、以前のような走りはできるのか? 期待と不安の中で迎えたのが、今週末、京都競馬場を舞台に行なわれるGⅢ「シルクロードS」です。


【次に目指すべきは4000勝です!】


 1枠1番の白帽子。激しくなるだろう先行争いを避け、道中は後方待機。「京都は必ず直線で内があく」という作戦に間違いはありませんでした。あとは、シーキングが、シーキングらしい走りをしてくれるかどうかです。
 一部ファンの間では、武豊は馬と話ができるらしいと、まことしやかに囁かれているようですが、それは嘘です(笑)。でも、話はできませんが、馬を信じ、覚悟を決めて乗るのが勝負師としての作法です。
 結果は、シナリオどおり、クビ差かわしての復活V。僕と彼女の恋が結実した……そんな瞬間でした。
 最後にひとつ、ニュースを。1月14日、京都5R、カレンケカリーナの勝利でJRA通算3500勝を挙げることができました。デビュー当時は夢にも思わなかった数字です。目標は?という質問に3500勝ですと答えたら、「アホか」と笑われていたでしょう。

 しかし、記録を達成したいまは単なる通過点です。
 これからも、関係者、ファンの皆さんの思いを大切にし、4000勝を目指して一つひとつ、白星を積み重ねたいと思います。

【武豊】馬を信じ、覚悟を決めるのが作法

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