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【武豊】無事是名馬だったステイゴールド

 名馬の定義は人それぞれです。僕たち騎手にとっての名馬とは、走るたびに優勝する馬のこと。
 しかし、馬券を買う人……なかでも穴党にとっては、高配当を運ぶ馬こそが名馬なのかもしれません。
 そして、馬主さんにとっての名馬といえば、やはり、怪我なく、無事に走ってくれる馬のことでしょう。
 馬主でもあった文豪・菊池寛氏が、

 競馬雑誌『優駿』に寄せた随筆……「馬主にとつては、少しぐらゐ素質の秀でてゐるといふことよりも、常に無事であつてくれることが望ましい。『無事之名馬』の所以である」という言葉には、なるほどとうなずけますし、いま、この言葉は、競馬の枠を飛び越え、すべてのアスリートにとって賞賛に値する金言となっています。
 無事之名馬・・・真っ先に僕が思い出すのは、ステイゴールドの名前です。2歳でデビューした彼は、以降、引退するまでの5年間で50走もした、まさに、競馬界の鉄人でした。
 4度のGⅠを含め、2着が12回もあったことから、“シルバーコレクター”といわれましたが、それも、彼のファンが親愛の情を込めて名づけた呼称でした。
 僕が彼とコンビを組んだのは6度。その中のひとつに、歴史的な勝利となった01年3月のGⅡ「ドバイシーマクラシック」(芝2400m)があります。
 しかし、彼を名馬たらしめたのは、なんといっても50走目となったラストラン……01年12月16日に行なわれたGⅠ「香港ヴァーズ」(芝2400m)でしょう。
 直線入口では、先頭を走るエクラーまで10馬身差。普通なら逆転は難しいところですが、この日のステイゴールドは、ディープインパクトも驚くような走りを見せてくれたのです。
 僕の見間違えでなければ(笑)、そのとき、彼には羽が生えていました。

【あのデットーリが引退を喜んだ名馬】

 馬こそ違いますが、ドバイ、香港ともに2着に退けたのは、ゴドルフィン・ブルーの勝負服をまとった名手、L・デットーリ騎手が操る馬。レース後、彼と次のような会話を交わしたのを覚えています。
「また、あの馬にやられたよ。僕とは相性がよくないみたいだ」
「ゴドルフィンの勝負服を見ると燃えるみたい。でも、これが引退レースなんだ」
「ユタカは寂しくなるだろうけど、僕にとっては、とてもいいニュースだね」
 世界ナンバーワンジョッキーにここまでいわせたステイゴールドを、僕はいまでも誇りに思っています。
 今週は、サダムパテックをパートナーに、その香港でGⅠ「香港マイル」(芝1600m)に挑戦します。「マイルCS」で、悲願のGⅠを奪取したサダムパテックは、引き続き好調をキープ。僕自身も大一番に向けて、シャンティン競馬場のコースを頭に描いて、作戦を練っています。
 まだ国内での成績には納得していませんが、今年はドバイ、フランス、イギリス、アメリカと海外での騎乗に恵まれました。その総決算として挑む香港……最高の結果をお届けします。

【武豊】無事是名馬だったステイゴールド

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