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日本古来からの怪現象「神隠し」の謎を考察!

[戦慄の事件ファイル]

"神様"はなぜ人間をさらっていくのか?

前触れもなく人がいなくなることを「神隠し」という。日本では古来より説明のつかない失踪事件を"神に隠された"と解釈してきた。

人を隠すのは神だけではない。高尾山をはじめ、青森県の天狗岳や岐阜県の天狗山など、神隠しの伝説は各地に伝わっている。

民俗学の大家・柳田國男の著書『遠野物語』には、いくつもの神隠しのエピソードが出てくる。その中には天狗が女を拐かどわかしたというものもある。

神、天狗、妖怪など、人知を超えた何者かが人をさらうこと。それを神隠しと、人々は怖れてきた。

ただし、昔の話に出てくる「神隠し」には、ある傾向がある。それらの話の多くは、ただ消え去ってしまうだけではなく、その後、さらわれた人物が現世に戻ってくるという話が多いのだ。

江戸時代には国学者の平田篤胤が、7歳のときに天狗にさらわれて数年後に江戸に戻ってきた寅吉という少年のことを、記録に遺している。また、民俗学者の折口信夫は、浦島太郎の話を神隠しと関連づけた。乙姫という神の代行者が支配する竜宮城という神域にさらわれ、帰還した話は神隠しと共通しているとした。

平安時代末期に成立した『今昔物語』では「備中の国の賀陽良藤、狐の夫となりて観音の助けを得たる語」というエピソードがある。

備中国賀陽郡葦森の賀陽良藤という長者が、妻子を捨て、一国の姫という美女と結婚し、子供を設け、13年間、幸せな暮らしを過ごした話。この話の結末は、良藤が狐に化かされたと気づき、元いた家に逃げ帰ると、実は13日しかたっていなかったというものだ。

現代でも、世界的に有名なアニメーション映画『千と千尋の神隠し』では、神に囚われてしまった少女が主人公となり、現世に戻ってくるまでを描いている。

どの話にも共通しているのは、神隠しとは一方通行的なものではないことだろう。

囚われた人が、異界で元気に生活を送り、ふとしたきっかけで、再び現世に戻ってくることができる「神隠し」とは、いったい何を意味するのだろうか?

そこには、その時代の背景や、そこに生きた人々の切なる思いが込められているという。
「江戸時代の飢饉や昭和初期の食糧難の時代には、村ぐるみで子供たちを間引きしたり、カネに困った親が娘を女郎として売り飛ばすといったことが行われることも、しばしばありました。ある研究では、そうしたことを神隠しとして語ることで、一種の免罪符にしたのではないかと分析しています。ほかにも娘が拐かされ、数年後に戻ってきたという伝承では、娘は戻ってきたときに天狗や鬼の子供を連れていたというものもあります。これらは近親相姦や強姦など止むに止まれぬ事情に、理由をつけ、また村などの共同体に負い目を感じることなく再び溶け込ませるための知恵だったのかもしれません」(国文学者)

浦島太郎の話も海での遭難事故を神隠しになぞらえ、いつの日か帰ってくる願いを込めたものという考え方もあるだろう。

しかし、この飽食の時代である21世紀においても、同様の事件は、そこかしこで起きている。どうやって消えたのかわからない行方不明事件を"神隠し"として称して、しばしば報道されているのは、誰しも目にしたことがあるはずだ。

そこには、ほかの事件にはない原因不明の恐ろしさや、薄暗いじんわりとした不気味さを感じずにはいられない。それらの背景には何があるのだろうか。

現在でも日本中で神隠しは起きている

豊かな時代の「神隠し」。解決している事件の原因を検証していくことで、前近代的な神隠しと現代のそれを比較してみたいと思う。

まず、神隠しと言われるものの原因で多いのが、「失踪」や「家出」だろう。

どちらの言葉も同じ意味に思われがちだが、この2つ、実際には明確な違いがある。

家出人や失踪者を探す依頼を数多く扱う探偵は、こう語る。
「失踪と家出の違いは、本人の意志によるところが大きいんです。失踪の場合は事件性が高いので警察へということが多いですが、家出の場合は自分の意志で家族の元から消えるので、探すのはなかなか難しい」

家出は、あくまで自分から家を出ること。一方、失踪の場合は、行方がわからなくなった人で、生死不明の状態が一定期間続くことを指す。

つまり犯罪や事故に巻き込まれて連絡が取れない可能性が高いときに使われる言葉である。

最近でも、神隠しではないかと騒がれた事件があった。

それは2013年7月11日に起きた千葉県茂原市の事件だ。高校3年の女子生徒が行方不明になってから77日後に、自宅から400mしか離れていない神社の祠で発見された。

この事件は、その真相について、これは本物の神隠しなのではないかと様々な憶測が飛び交った。実際、女子生徒が戻ってきてからの様子は、神隠しに遭ったという人のそれと酷似していたからだ。
「(妹は)顔を半分布団に隠していて、語りかけると首を縦横に振って合図はするが、喋ってはくれない」

発見されてから数日後、女子生徒の兄は、このように語った。そして、記憶喪失などにはなってはいないが、失踪中の時間の感覚はあまりないともコメントした。

女性や子供は神隠しに遭いやすい気質を持つ!?

〈運強くして神隠しから戻ってきた児童は、しばらくは気抜けの体で、たいていはまずぐっすりと寝てしまう。それから起きて食い物を求める。何を問うても返事が鈍く知らぬ覚えないと答える者が多い〉

これは柳田國男が著した『山の生活』の一節だ。この描写と女子高生の状態がそっくりなのが、おわかりだろうか。しかし、こんな状態は数日間ひどい環境に置かれれば、誰しもこうなってしまうのは当然だろう。

柳田國男は女性や子供が"神隠しに遭い易き気質"を持っているとも記している。柳田は女性や子供特有の不安定さが神隠しの原因になり得ると考えたのだ。

前述した事件の真相は失踪もしくは家出と考えられるが、少女がその当事者であったことに、奇妙な符合を感じるのは筆者だけではないはずだ。

茂原の事件は、幸運にして、少女は無事に自宅に戻ることができた。しかし、なかには悲劇的な結末を迎えた事件もある。それが、広島一家失踪事件だ。

2001年6月4日に広島県世羅町で祖母、父、母、娘、ペットの犬が揃って失踪した。この事件が起きた世羅町近くの大将神山では、江戸時代にお夏という女中が突然姿を消したという神隠し伝説が残っており、オカルト的に報道された未解決事件だった。

ところが、翌2002年9月7日に町内のダムの湖底から、裏返しで沈んでいる乗用車が発見されたのだ。そして、車内から4人と愛犬の遺体が見つかった。当事者全員の死亡により、真相はいまだ不明のまま。地元では憶測を呼んでいるが、噂の域を出ず、結局のところ、警察の捜査では無理心中と結論づけられた。

人が神隠しに遭ったと思われる事件では、消えた人物が自分の意思によって、姿を消すという場合も少なくないのだ。

幸運にも神の手からこぼれ落ちた人たち

次に挙げられるのは「誘拐・拉致」型だろう。

実は拉致と誘拐は、用途に応じた使い分けがある。誘拐が法律用語で、拉致は一般用語なのだ。テレビやマスコミの報道では混在することもあるが、捜査機関や裁判所では誘拐を使う。その意味合いに多少の差はあるが、「誰かを無理やりに連れ去る」ということでは同じ意味である。

本人の意志とは無関係に連れ去られるわけだから、周囲の人からすれば「こつ然と消えた」ことになる。そういう意味では「誘拐・拉致」は、まさに神隠しという言葉のニュアンスに近い。

最近では、今年2月に起きた札幌の女児行方不明事件があった。買い物に出かけた9歳の女の子が26歳の男に連れ去られて監禁されるという事件だ。

女の子は事件当日の午後3時に自宅から約100mのコンビニエンスストアで同じ小学校の児童と会ったのを最後に、行方不明となっていた。自宅のすぐ近所で昼間に消えたことで「神隠し」として騒がれたのは、記憶に新しい。

だが、この事件は意外な形で決着を見せた。
「子供の叫び声が聞こえた」などと、犯人の近所に住む人が通報し、警察が犯人宅に踏み込んで逮捕されたのだ。しかも、その様子がインターネットの掲示板に書き込まれるなどして話題を集めた。

同様に神隠しとして騒がれて解決した「誘拐・拉致」型の事件には、新潟の少女監禁事件がある。

1990年に新潟県三条市の路上で佐藤宣行(当時37歳)が衝動的に9歳の少女を誘拐し、そのまま自宅に監禁した。2000年に発覚して解放されるまで、9年2カ月が経過していた。佐藤の公判では、神隠しの瞬間に何が起きたのか、生々しく明らかにされた。

下校途中で農道を歩いていた少女に佐藤が刃物を突きつけて脅し、抵抗する少女を車のトランクに入れて連れ去った。計画性も少女との接点も皆無であり、通常の捜査で佐藤が浮上してくることはなかった。そのため「神隠し」として扱われる事件となったのだ。

「誘拐・拉致」の被害者が証言可能な年代に達している場合、保護されるケースは稀である。

宮崎勤が起こした東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件のように抵抗されたり、解放後に証言されるのを恐れて殺害されることが大半なのだ。

たとえば08年に起きた江東区のマンションOL神隠し殺人事件は、ややもすれば完全に神隠しとして扱われていたかもしれない。

オートロックでセキュリティーも万全なはずのマンションで、女性が行方不明になった。ところが、防犯カメラに犯人らしき姿すら映っていなかった。

それもそのはず。逮捕された犯人は隣室の男だったからだ。被害女性が帰宅した玄関音を頼りに乱暴目的で押し入り、抵抗されたために殺害、遺体を切り刻んで風呂場から下水に流して処分したという、残虐極まりないものだった。

遺体までをも確実に消してしまえば、被害者の痕跡は、そこでプッツリと途切れてしまう。いままで神隠しとして扱われた未解決事件では、このようなものも多いに違いない。

それは神の代行者なのか、ただの狂信者なのか?

驚くことに神隠しに"神"が介在していた事件もある。

とは言っても、この"神"とは人間。つまり宗教団体が絡んでいるものも少なくないからだ。

代表的なところでは、オウム真理教の出家信者たちだろう。この場合の出家とは、財産をそっくり教団に寄付し、俗世=家族との縁を切ることになっている。こういった事例では、身内からすれば、家族が神隠しにあったとしか思えないはずだ。

こんな出家型の神隠しは、近親者からすると非常に厄介な存在だ。出家した人物の行方調査を、家族に依頼されたことのある調査会社の社員はこう語った。
「宗教がらみの行方不明者を見つけるのは難しいんです。私の担当した依頼の中には出家する直前に運転免許証やカード類のすべてが破棄させられていて、どこかわからない新興宗教の施設に連れて行かれる直前に確保できたということがありました。あのまま出家されていたら、見つけようがなかったですね」

この調査員によれば、基本的に行方不明事件で調査の基本となるのは、個人の銀行口座などのカネの動きで居場所を特定していくことだという。

だが、社会とのつながりを意図的に断ってくる宗教が絡んだ行方不明事件では、探すのも難しいうえに本人が教団から洗脳されていることも多いため、解決が困難なこともあるいという。
「たとえ連れ戻したとしても、洗脳が解けていない場合、自らの意志で教団に戻ってしまうこともしばしばあるんです」(前同)

これらとは一線を画して、個人や特定の団体の思惑を超えた大規模な神隠しも日本では起きている。それが「特定失踪者」だ。これは「北朝鮮による拉致の可能性を排除できない失踪者」のことだ。

国家が介在する許されざる神隠しとは!?

現在のところ、日本政府が認定している拉致被害者は17人だが、実際に北朝鮮により拉致された人は、それよりもはるかに多いとされている。

02年9月17日に北朝鮮を訪問した小泉純一郎総理大臣(当時)は、金正日と会談して拉致被害者たちを日本に連れ戻すことに成功した。その結果、明らかになってきたのは拉致当時の様子だった。

まず、失踪者とされた人たちの中には医師、看護師、機械系の技師がいる。この人たちが選ばれたのは偶然ではない。
「当時の北朝鮮が技術面で遅れていた分野に明るい人材を欲していたというのが、拉致の理由のようです」(北朝鮮事情に詳しいジャーナリスト)

計画的にターゲットを選別して拉致工作をしていたというが、特定失踪者の中には横田めぐみさんのように、当時中学生だった少女まで含まれているのは、なぜか。
「横田めぐみさんの場合には、別の工作活動をしていた北朝鮮の工作員を偶然見てしまい、口封じのために拉致されたという見方が強いんです」(前同)

このように北朝鮮による「神隠し」は、場当たり的な行動も多くあったと見られている。

北朝鮮では、金一族は"神"のような存在だという。北朝鮮からみれば、特定失踪者事案は、まさに神の意志によって遂行された"神隠し"なのかもしれないが、我々から見れば、決して許されない国際犯罪だ。

海外での離婚から子供が神隠しに!?

そして"神隠し"の原因として、ここ数年増えているのが、婚姻トラブルだ。

これは離婚した親が子供を連れ去るというもので、主に親権を取れなかったほうの親が行動に出るケースが多い。親権を持っている側に悟られないように子供を連れ去ることから、見方によっては神隠し的要素が強くなっている。

ある女性から「子供を連れ戻したい」と依頼された経験のある探偵は、次のように語る。
「地方では、地縁や血縁の強いエリアがいまだに多いです。そこに別の地域から嫁いで子供を産み、その後、離婚になった場合、跡継ぎを外部に出したくないとして、一族が総出で子供を渡すことに反対する。でも、母親は子供を引き取りたい。そこで、父方に気づかれないように連れ去るわけです。だから、父方にしてみれば神隠しですよね」

依頼者の女性は地方に嫁いで離婚後に実家に戻った。離婚の条件として子供は自分が引き取ることになったが、父方がそれに従わずに、子供を渡さなかったのだという。
「連れ去るときは、自宅近くの公園で遊んでいる子供に近づいて、抱えて走り去ったんですよ。はたから見れば、完全に人さらいでしたね。子供には"お母さんに頼まれた"って言って、移動中に携帯電話で話させて納得してもらったんで、騒がれたりはしませんでしたけれども」(前同)

当然ながら親権を持っている側が正当性を主張できるため、事件には発展しなかった。

しかし、こうした子供の連れ去りは、実は今後、国際問題化する可能性が高い。日本が『国際的な子の奪取の民事面に関する条約(ハーグ条約)』を批准したからだ。

この条約では「国際結婚で生まれた子供は原則的に元の居住国に強制的に連れ戻す」という決まりになっている。そのため外国で結婚出産して離婚した場合、子供と別れ帰国せざるを得ないのだ。

国際法に明るい弁護士に話を聞くと、「条約を知らないで日本に子供を連れ帰る人が最近増えています。これが常態化したら、国際的には日本は世界有数の拉致国家と見られる可能性があります。このままでは、北朝鮮を非難できなくなってしまう可能性もあります」

と指摘する。気づかないうちに日本が、神隠しを誘発する国家になるかもしれないのだ。

これからは海外で結婚している人が離婚した場合は、事前に子供の扱いなど、しっかりと取り決めをしておかなければならないだろう。

毎年、日本では10万人が消えている!?

様々な形の神隠しが起きている日本では、いったい、どのくらいの人数が消えているのか。そして消える人がいる一方で探したいと願う人もいる。そんな人たちが警察に捜索願を出した数が、警察庁から発表されている。

01年の10万人をピークにして、10年頃からは毎年8万人で推移している。年代別に見ると、成人が70~80%だが、毎年1000人前後の9歳以下の幼児が行方不明になっている(『行方不明者の状況』〈警察庁〉より)。

行方不明者数の一件ずつに複雑な背景があるのは、紹介してきた事例を見ればわかるはずだ。

そして、それらすべてに共通することがある。人間の持つ"闇"というべきものだ。「神隠し」という言葉の裏側に透けて見えるのは、強烈な人間の悪意と身勝手さなのだ。

かつての神隠しにも"闇"はあった。だが、それは通常では解決できない出来事への後ろめたさの解消と、残された人々が辛い日々を消化するための理由づけに過ぎなかった。それにより、彼らは「神に隠されたのだから死んでいるとは限らない」という希望にすがることができたのだ。

しかし、現代の神隠しには必ず人の悪意が介在している。もし、その悪意を人知を越えたものが演出しているというのであれば、それは神ではなく、間違いなく悪魔の仕業なのだろう。

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