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凶悪「マインドコントロール殺人」恐怖の実態

[戦慄の事件ファイル]

近年起きた凶悪犯罪では、「マインドコントロール」という言葉をよく耳にする。人の心に入り込んで洗脳し、その相手を、あたかも自分の意思で行動しているかのように誘導する――その結果、通常では考えられないほど残虐かつ大量の殺人をも行わせることができるという。

一般的に”マインドコントロール=宗教”というイメージを抱きがちだが、そうとは言い切れない。その恐怖は、私たちの身近なところに潜み、誰もが囚われてしまう可能性を持っている。実際に、ごく普通の人がその毒牙にかかり、凄惨な事件に巻き込まれたケースも多いのだ。

マインドコントロールとは、いかにして人に取り入り、また、いかにして人を思いどおりに操る手法なのか? その巧妙かつ非人道的な手口を、数々の事件から暴き出し、警鐘を鳴らす!


日本で「マインドコントロール」という言葉が一般に認知されるようになったのは、統一教会の合同結婚式や一連のオウム事件などがマスコミを賑わせた、1990年代あたりからだろう。しかし、アメリカでは70年前後から、マインドコントロールによる殺人事件が起きている。

なかでも有名なのは、ハリウッドの人気女優、シャロン・テートが惨殺された『シャロン・テート事件』(1969年)だ。

事件を起こしたのはチャールズ・マンソン(35歳=当時、以下同)と、その信奉者の集まりであるマンソン・ファミリー。最初のうちこそ、フリーセックスとドラッグに溺れるだけの集団だったが、彼が終末思想を説き始めた頃から、ファミリーの活動は過激になっていく。窃盗や強盗を繰り返したあげく、彼らは同年8月9日、マンソンに命じられるままにシャロン・テートの自宅を襲撃し、彼女を含む5人を惨殺してしまった。

また、78年には南米のガイアナ共和国で、宗教団体・人民寺院による集団自殺事件が起きる。

教祖であるジム・ジョーンズ(47)は、もともとキリスト教系の真面目な聖職者だったが、チャールズ・マンソンと同じく終末思想を唱え始め、多くの信者を獲得していった。

しかし、脱会した元信者とトラブルを起こし、アメリカから、南米のガイアナへと移住する。そこで自給自足の共同生活を行っていたが、元信者からの告発でアメリカ本国では批判が過熱。議員団による視察を受けると、それを襲撃し、議員ら16人を死傷させた。このことで終わりを悟ったジョーンズは、400人以上の信者とともに自殺してしまったのだ。

似たような例だと、日本でオウム真理教が騒がれるようになった94年、フランスやカナダ、スイスで太陽寺院という宗教団体による集団自殺事件が起きる。

同団体は、神秘主義に秘密結社の要素を加えたオカルト的な内容で勢力を拡大させたが、銃の不法所持容疑で強制捜査を受けたことをきっかけに、信者の脱会が増え始める。教祖のジョセフ・ディ・マンブロ(70)とナンバー2のリュック・ジュレ(47)は、そのことに危機感を持ち、信者たちに集団自殺を促した。

その結果、自殺者は74人という人数に上った。信者と一緒に教祖・マンブロとジュレも自殺をしたため、自殺事件の真相は現在も闇の中だ。

海外のみならず日本国内でも、宗教がらみの凶悪事件は多い。

福島県須賀川市で95年に起きた『福島悪魔祓い事件』は、自称・祈祷師の江藤幸子(47)によるものだ。彼女は信者たちを操って、互いに暴行させ、女子高生を含む6人もの死者を出した。

江藤が祈祷師になったきっかけは、夫のギャンブル癖だった。当初は別の宗教に救いを求めていたが、問題は解決せずノイローゼになった結果、自ら神と名乗り始める。手かざしで病気を治すと言って近所の家に押しかけ始めると、実際に腰痛や喘息が治ったと言い出す連中が現れ、口コミで信者は徐々に増えていった。

惨劇は、その中の一人で江藤が思いを寄せる若い男性信者Nに対し、女性信者Sが好意を持っていると言い出したことから始まる。

神の魂に近い(と江藤は言っていた)Nを好きになるのは、キツネが憑いたからだと言いがかりをつけ、悪魔祓いと称して、Sを太鼓のバチで殴り始めたのだ。

江藤は「御用」と呼ぶその儀式を、ほかの信者にも強要。彼らはその言葉を信じ、言われるままにSを殴り続け、死亡させたという。

江藤の単なる嫉妬から始まったものだが、1人が死んでもなお続き、結果的に6人が命を落とすことになった。

2012年に青森で起きた『青森全裸監禁事件』もカルト教団によるものだ。女性が急死したとの通報で警察がアパートへ駆けつけると、そこには全裸に犬用の首輪をつけられ、ワイヤーで縛られた異様な姿の遺体があった。全身に60カ所を越える暴行の跡があったため、調べてみると、通報者を含む3人の男が、斎藤真紀(40)からえたということが判明した。

暴行はおよそ半月も続き、特殊警棒で殴りつけたり、ライターオイルをかけて火を点けるなどエスカレート。女性は多臓器不全によって死亡した。

この斎藤も、神の声が聞こえると言い、それを信じる男女と明手會という教団を作っていた。

この手のリーダーは、病気治療や悩み相談などで自分の力を信者に信じさせて取り込んでいくのが常套手段。だが、斎藤が見せていた力は、パチンコで勝ったり、テレビゲームで高得点を上げるなどといったものだった。それでも男たちは、斎藤に力があると信じていたという。信じ難い話だが、これがマインドコントロールの持つ力なのである。

命と資産を根こそぎ奪うカネ目当ての事件が勃発!

マインドコントールの力を使うのは教祖だけではない。一見、普通の人物がカネを目当てに身近な人間を取り込み、凶悪な犯罪を起こしている。

01年に発覚した福岡の『元看護師4人組保険金連続殺人事件』の犯人は、看護師のグループの1人・吉田純子(33)だった。彼女は、看護学校時代に同級生だった3人の女性を取り込み、自分に依存させていった。

吉田はグループの女性で既婚だったHとKの2人の夫婦仲を、嘘で塗り固めた言葉で引き裂き、彼女たちに、それぞれの夫を殺害させた。自らの手を汚さずに、同僚を保険金殺人へと誘導したのだ。

殺害方法は看護師ならではのものだった。Hの夫は夕食に睡眠薬を混ぜて眠らせたところで、静脈注射で空気を送り込み殺害。Kの夫も睡眠薬で眠らせたあとに、マーゲンチューブ(鼻から胃に挿入する医療器具)で、ボトル1本分のウイスキーを流し込んで殺害している。さらに吉田は、グループの残る1人・Tの母親を注射器で殺害することを指示したが、これは幸いにも失敗に終わった。

吉田は、このグループで完全に女王として君臨しており、殺人で得た保険金は、ほぼすべて自分のものにしていた。

保険金以外の強制的な借金も含めると、グループ3人が吉田に奪われた金額は、およそ2億円にも上ったという。3人は、完全に吉田に操られていたのである。

主犯の人間が自分の手を一切汚さずに、人に人を殺させる――これがマインドコントロール殺人の恐ろしいところだが、それが宗教の”カリスマ教祖”ではなく、ごく身近にいる人間だというのが、この事件の特徴といえよう。

さらに、マインドコントロールは常識では考えられないほど残酷な行為を、人に強いることができる。その例が、”史上最悪のマインドコントロール殺人”といわれる『北九州監禁殺人事件』と、一昨年に世間を震撼させた『尼崎事件』だろう。

北九州監禁殺人事件の主犯・松永太(41=02年逮捕時)が、まず取り込んだのが、緒方純子(40=同)だった。82年に学校を出て働き始めたばかりで、男慣れしていなかった緒方は、最初こそ松永に警戒心を持っていたが、その強引かつ狡猾な口説きに負け、ついに肉体関係を持ってしまう。 

つき合い初めこそ甘い言葉をかけていた松永だったが、すぐに凶悪な本性を現し、暴力で緒方を支配するようになっていった。家族と断絶させられ、完全に松永に支配された緒方は、それ以降、松永の操り人形となり、数々の犯罪に手を染めていってしまう。

松永の最初の犠牲者になったのは、不動産会社で働いていたHさんだ。言葉巧みに彼を取り込んだ松永は、酒を飲ませておだて上げ、過去の不祥事を聞き出すと、それを材料に脅しをかけ始める。

さらに松永は、監禁、虐待をすることで恐怖心を植えつけ、Hさんの実の娘を自分の家に住まわせて人質状態にし、Hさんを完全なコントロール下に置いた(後に、この娘が脱走して事件が発覚する)。

あらゆる知人から借金をさせてHさんからカネを搾り取り、もう金主としての価値がないと判断すると、その虐待はエスカレートしていった。

その虐待で、主に使われていたのが”通電”だ。これは松永が経営していた布団販売会社の従業員が遊びで作った器具がヒントになっており、彼は、それを強力にしたものを使っていた。

松永は通電の威力を上げるため、電気コードの導線を剝き出しにして手首や太腿などに巻きつけていたが、この状態でプラグを抜き差しされると、肉がちぎれるような熱さに加え、脳天に衝撃が走り、失神をしてしまうほどだというから恐ろしい。最初こそ罰として行われていた通電だが、徐々に松永が楽しむための行為となり、その時間も長くなっていった。コードをつける箇所も皮膚から乳首、性器へとエスカレートし、たび重なる通電で肉が焼け溶けて、骨が見えている部分もあったという。

Hさんは真冬でもシャツとズボンのみで浴室に閉じ込められ、食事は1日2回、わずかな白米と玉子のみ。大便は1日1回に制限され、我慢できずに漏らしてしまったときは、それを食べることを強要された……。

「松永が逮捕された当初こそ、新聞などで大きく報道されたんですが、捜査が進むにつれ、ほとんどのメディアが報道を自主規制してしまいました。その内容が、あまりに残虐でショッキングだったからです。この事件が、それほど一般に知られていないのは、そのせいですね」(全国紙社会部記者)

巧みな洗脳と暴力によって地方の名家一族が丸々消滅!



このような状況で、Hさんは当然のように衰弱死してしまう。

すると松永らは、その死体を隠すため、ひと月かけて全身を包丁で解体し、肉は長時間煮込んでミキサーにかけ、公園の公衆便所で流した。骨や歯は粉になるまで砕き、味噌と一緒に団子状にして海に捨て、完全に隠蔽したのだ。

松永は、これらを自分では実行しなかった。緒方とHさんの娘である少女に指示して、惨い地獄の作業をやらせた。

松永が次にターゲットとしたのが、緒方の親族である。娘の犯罪行為をバラすと脅し、一家を自分のコントロール下に置いたのだ。

名家だった緒方家は、娘の犯罪を隠すため、地獄の結末が待っているとも知らず、自ら松永の元へ向かった。松永はそれまでと同じように、一家を脅して支配下に置き、財産をすべて売らせたあげくに借金をさせ、搾れるだけのカネを搾り取った。

奪うものがなくなると、当然のように虐待が始まる。まず標的にされたのが父親のTさん。そして母親のSさんだった。ちなみに松永はSさんと強引に肉体関係を結び、娘の純子や、ほかの家族と反目するよう仕掛けていった。

そして、結婚していた純子の妹・Rさん、一家を取り戻そうとやってきたRさんの夫・Oさんも取り込んで殺害。さらに、その子供2人も手にかけ、完全に一家を消し去ってしまった。もちろん、ここでも松永は直接手を下さず、家族に命じて殺害を行わせている。

一方、約25年間で尼崎市を中心に兵庫県、高知県、香川県、滋賀県、京都府で複数の家族が監禁・虐待され、わかっているだけでも12人の命が奪われた『尼崎事件』。その主犯である角田美代子(64=12年逮捕時)は、マインドコントロールでほかの家族を乗っ取り、残酷な犯罪を繰り返してきた。命や財産を取られた家族は複数に上るが、その手法は似通っている。

まず、なんらかのつながりを一家と持ち、些細なことで因縁をつける。そして家族の1人を批判して孤立させ、家族同士の関係にヒビを入れる一方で、その人間に優しい言葉をかけて取り込むのだ。

03年に乗っ取られた家族の一つ、香川のTさん一家は、夫のAさん、妻のHさん、長女のMさん、次女・Rの4人で暮らしていた。

角田はそこに、Hさんの実兄が作った借金をネタに乗り込む。そして、Hさんの義理の甥で、自分の義理のいとこであるマサを預ける。親戚のよしみで、粗暴なマサを更正させろというのだが、彼のあまりの粗暴さにたまりかねたAさんがマサを送り返すと、10人ほどの屈強な男たちを引き連れて、角田が戻ってきた。

彼らは昼夜を問わず騒ぎ、家財道具を壊し、Aさんを耳の形が変わるほど殴りつけて家族に恐怖心を与え、一家をコントロール下に置いてしまったのである。

こうして、角田によるTさん一家の監禁が始まった。外出を禁止して外部と断絶し、食事はもちろんトイレの回数まで制限された。恐怖のなか、MさんとRの姉妹は次第に角田に隷属し始め、命令されるまま両親を殴るようになってしまった。

やがて角田たちは、Tさん一家の全財産を搾り取ると、姉妹を連れて、尼崎へ引き揚げる。奥さんのHさんはその前に逃亡していたが、数年後に見つかって尼崎へ連れ戻され、不審死。またHさんの叔父、母親のNさんも角田一味によって監禁され、死亡している。

姉妹は尼崎で角田と一緒に住まわされた。当初こそ、あまり虐待を受けず、姉のMさんも角田一味の男を当てがわれて結婚をしたが、逃亡を図ったことから虐待され始める。食事を制限され、連日、殴る蹴るの暴行を受けたうえ、角田のマンションのベランダに作られた小さな監禁小屋に押し込まれたMさんは、08年に死亡。その遺体は、マンションからほど近い民家の床下に隠された。その一方、次女のRは角田の寵愛を受け、角田の息子と結婚。角田とともに数々の犯罪行為に関わることになる。

そして12年、監禁から逃亡した女性が大阪府の交番に駆け込んだことによって、ようやく事件が明るみになり、角田をはじめ、複数の容疑者が逮捕されたのだ。

その巧妙な手口の数々と巻き込まれないための手立て



人間をこれほどまで残酷に変えてしまうマインドコントロール事件はなぜ起きるのか? マインドコントロールに関する刑事事件を多く扱う弁護士の紀藤正明氏は、その背景には経済の発展があると言い、その理由をこう指摘する。

「発展途上の時代は、衣食住が悩みの中心でしたが、経済が発展して、それが満たされると、人生の意味など、生きることの悩みに変わってきます。マインドコントロール事件はそこを利用した現代ならではの現象と言えるでしょう」

では、その”生きることの悩み”につけ込む手法とは、いったい、どんなものなのだろうか?

「それらの解決できない問題を、できると言うんですね。そう言われるだけで、悩んでいる人は心が軽くなる。そこからまず信頼関係を作っていくんです」(前同)

たとえば、前出の元看護師4人組保険金連続殺人事件では、泥沼の不倫で悩むTに対し、吉田は相談に乗り、その解決を請け負った。Tはそれ以降、より深く吉田に依存していったのだ。そして、カルトは被害者を外部と断絶させることによって、その依存度を強めていく。

「多くのカルトは、まず信者と家族を断絶させます。情報を遮断し、憎しみを持たせる方向に誘導することで、自分への依存度を高めるんです」(同)

尼崎事件では、一家に乗り込んだときも自宅に監禁するときも外出を禁止していた。また、北九州監禁殺人事件では、緒方に家族を電話で罵倒させ、意図的に絶縁状態を作り上げていた。

さらに両者に共通するのは、家族内でも互いの批判を強制的に繰り返させて、完全に孤立させていること。こうなると、誰も頼る者がいなくなり、暴行を受けながらも命令者への依存が強まるのだ。

実際に尼崎事件では、Mさんには取り巻きの男たちだけでなく、同じく監禁されていた別の家族にも暴行を加えさせたという。

「この状態で虐待を受け続けると、人は学習性無力感という状態になります。長期にわたって不可避のストレスが続くと、その状況から逃れようと努力することができなくなるんです。ナチス収容所の囚人たちにも、この傾向が見られました。これは誰でもなってしまうことです」(心療内科医師)

誰でもそうなり得るとは、なんとも恐ろしい。実際に尼崎や北九州の両事件でも、精神的にまったく健全だったはずの人間が巻き込まれ、お互いに殺し合いをしている。もし、それがカルト教団相手で、精神的に安定していれば、警戒心を持つことはできるだろう。

しかし、それを目論む人間が恋人や身内だったとしたら、最初から拒むことができるだろうか。我々がマインドコントロール殺人に巻き込まれないためには、いったいどうすればいいのか?

「誰しも悩む時期はあります。そこを狙われたら、よほどでない限り、たちどころに引っかかってしまいます。それを防ぐには、まずマインドコントロールについて知ること、勉強することですね。どんな手口が使われるのかを知れめますから」(前出・紀藤氏)

ここまでに紹介した事件の被害者たちも、まさか自分がマインドコントロールされ、身内を殺すことになるとは思っていなかったはずである。

そして、それはこの現代社会に暮らす、どの人間にも言えることだろう。地獄への入口は、我々のすぐそばで、いまもポッカリと口を開けているかもしれない。
〈文中一部=呼称略〉

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