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第6回 殺人犯の定義


岩井志麻子のあなたの知らない路地裏ホラー


有名な殺人犯、とされていた男に会ったことがある。
彼は自分はやってないと、最後まで否定し続けていた。

確かに彼は直接、手を下してない。いわゆる殺し屋を雇って、そいつにやらせたのだ。
確かに、彼自身は殺してない。でも、殺人犯なのも間違いない。

さて。まだ肌寒いときもある夜半、新宿の店の女性にこんな話を聞かされた。

「東南アジアの某国に、強烈なダイエット薬があります。医師の処方箋がなきゃ買えない。だから私、定期的にその国に行っては自分が患者になって処方箋もらって、現地の薬局で大量に買います。そうやって日本に持ち込んだ薬を、高値で売りさばくんです。
先日お得意さんの女が、その薬とは違う、もっと悪い薬と酒をいっぺんに飲んで死にました。発見したのは、女の彼氏。彼氏が、もっと悪い薬を持ってきた張本人だった。
だから彼、警察に『彼女は外国の危険なダイエット薬を飲みすぎた』といい張りました。
自分の飲ませた薬で、殺したことにしたくなかったから。
捜査が面倒くさいんでしょうね、警察はあっさり自殺と断定して、解剖も何もせず彼女の死を処理してしまいました。
でも……そのダイエット薬の国って、呪術も盛んなのをご存じですか。ある伝手で私と彼氏が、彼女の死に関わっていたのを知った彼女の親が、娘を殺したのはその二人だと決めつけました。まぁ、間違ってはいないんですけどね。
彼女の親は現地に飛んで有名な呪術師を雇って、私と彼氏に呪いをかけたらしいんです。目的はもちろん、死。
私と彼氏が死んだらご両親は、呪術師が殺したとはいわないでしょう。自分達がこの手で娘の仇を討った、そういうんでしょうね。これまた、殺人犯としては裁かれない」



岩井志麻子(いわい しまこ) プロフィール
1964年12月5日生まれ
A型
高校在学中の1982年、第3回小説ジュニア短編小説新人賞に佳作入選。少女小説家を経て、1999年『ぼっけえ、きょうてえ』が選考委員の絶賛を受けて、日本ホラー小説大賞 を受賞。 半生を赤裸々に語るトークや「エロくて変なオバチャン」を自称する強烈なキャラクターが注目を集める。

 

 

 

第6回 殺人犯の定義

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