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現役当たり屋スラッガー9人「飛ばしのテクニック」

[週刊大衆05月26日号]

横浜 バットの芯でとらえた打球の速さこそブランコの身上

4月8日の逆転満塁ホームランは、開幕から鳴りを潜めていたトニ・ブランコの久々の大噴火だった。
3点ビハインドの7回2死満塁、タイガース・藤浪晋太郎のカットボールを叩いた打球は美しい放物線を描いてバックスクリーンに突き刺さった。

5年前の日本デビュー(中日)も衝撃的だった。
初打席でいきなりホームラン。
さらに1か月後には広島のエース・前田健太からナゴヤドームの天井スピーカーを直撃する推定飛距離160メートルの大飛球を放ち、同ドーム初の認定本塁打を記録した。

この年、39本塁打、110打点で二冠に輝くと、翌年も32本塁打。
しかし、その後2年間は16本、24本と低迷した。

昨年、横浜DeNAへの移籍が「吉」と出た。
本拠地が広いナゴヤドームから横浜スタジアムに変わり、逆方向へのホームランが増えた。
何しろバットのヘッドスピードはバレンティンの151キロを凌ぐ158キロ。
芯でとらえた打球の速さこそブランコの身上だ。
振り回す必要はない。

さらに2000本安打を達成したアレックス・ラミレスから配球の読みを学べたのも大きかった。
初の3割(打率・333で首位打者)はその賜物だ。

今季は4月16日の左足負傷で戦列を離れたが、低迷するチームの逆襲にこの男の存在は不可欠だ。


楽天 メジャー通算434本塁打威圧感あふれるジョーンズ

メジャーリーグでの実績なら過去に来日した外国人選手の中でも文句なしにピカイチだ。
05年には51本塁打、128打点をマークして二冠に輝き、通算でも434本塁打。

しかし、AJことアンドリュー・ジョーンズが素晴らしいのは打撃だけではない。
外野守備も超一流で、イチローと同じく10年連続ゴールドグラブ賞を受賞。

さらにデビュー当時は前人未到の「50本塁打・50盗塁」を期待されるほどの脚力もあった。

さすがに年齢的な衰えもあって日本ではDHがほとんどだ。
守備に就く機会も、盗塁を企てることも少ないが、バッティングではメジャーリーガーならではの凄みを垣間見せる。

昨シーズン序盤、ソフトバンクのファルケンボーグ(現・東北楽天)が投じた156キロの速球をKスタの最深部まで飛ばした弾丸ライナーの本塁打は、今も語り草だ。
まさに空気を切り裂く一撃だった。

最終的に打率は2割5分を切り、26本塁打、94打点。
しかし105の四球を選び、出塁率は4割に近い。

威圧感たっぷりのAJが4番に座ることで打線もつながった。
明るい性格でチームに溶け込み、ムードメーカーも買って出た。

今シーズンも連覇を目指す若いチームの精神的支柱はやはりAJだ。夏場に向けて、その打撃は一段と凄みを増すはずである。


阪神 研究熱心な姿勢で日本野球に適応を果たしたマートン

マット・マートンは決してホームランバッターではない。
自身も「本塁打は狙っていない。いい球が来たら、いいスイングをするだけさ」と語っている。

まさに好球必打。
その最良の結果が、来日1年目の10年、それまでイチローが保持していた日本記録を更新するシーズン214安打だった。

11年と13年にもリーグ最多安打を記録。
その一方で、過去4年間で20本塁打も100打点も一度もない。

ところが、今シーズンは長打力と勝負強さが際立っている。
開幕からホームランを量産し、得点圏打率は4割強。
不動の5番バッターとしてすっかり打点マシンと化した感がある。

とりわけ目を引いたのは4月2日から6日までの5試合連続打点。
この間、猛打賞は3回、本塁打は3本を数え、打点は合計17に達した。

マートンを語る上で欠かせないのが"マートン・ノート"の存在だ。
対戦投手の球種やクセ、審判の傾向など気がつくことを毎日こと細かにメモしている。

試合後はクラブハウスのビデオ室に足を運び、その日の自分のバッティング内容をチェックする。

この研究熱心さが日本野球への適応を助け、軸のぶれないコンパクトなフォームとなって結実した。
真面目外国人マートンの長距離打者への変貌は阪神優勝のカギとなるに違いない。


巨人 高難度の"ツイスト打法"阿部慎之助のバッティング

キャッチャーで通算300本塁打を達成しているのは3人しかいない。
野村克也(657本)、田淵幸一(474本)、そして阿部慎之助(327本)である。

12年にはセ・リーグ初の「キャッチャーで三冠王」にも接近した。
打率・340で首位打者に、104打点で打点王に輝きながら、ホームラン27本はバレンティンに4本及ばなかった。

キャッチャーというポジションでこの数字は驚異である。
この年、巨人は日本一となり、攻守に渡ってチームを牽引した阿部がシーズンMVPに輝いたのは当然だろう。

試合終盤の勝負強いバッティングも折り紙つき。
サヨナラ安打は通算12本(うち本塁打6本)。
02年8月には3度のサヨナラ打を記録し、「サヨナラ慎ちゃん」の異名も定着した。

バッティングスタイルは"ツイスト打法"。
打つ瞬間に、腰を逆に回転させる意識を持つことにより、下半身の開きを抑え、ボールを引きつけて体に近いポイントで打つ。
プロならではの高難度の打法を修得し、阿部は高打率と長打力の二兎を得た。

今シーズンは故障の影響で出遅れたが、4月16、17日と2戦で4本塁打。
とにかく打ち始めると止まらない。

04年には史上最速となる「開幕33試合での20本塁打」も記録している。
巨人の日本一奪回に阿部の打撃は欠かせない。


中日 独特の打法で活躍を続ける大器晩成型の男・和田一浩

14年は和田一浩にとって記録尽くしのシーズンとなっている。

4月8日、ヤクルト戦で通算300本塁打を達成。
史上39人目だが、大学卒業、社会人を経ての300号到達は初の快挙。

その1週間後には通算1000打点にも手が届いた。
41歳9か月での達成は谷繁元信の42歳5か月に次ぐ年長記録である。

もう一つ、今季中に達成可能なのが通算2000本安打。
夏場にはカウントダウンが始まりそうだ。

プロ入りしたときはキャッチャーだった。
しかし西武黄金期を支えた正捕手・伊東勤の壁は厚く、6年目の02年から外野手一本に。
この年、打率・319、33本塁打、81打点を記録。
30歳になっていた。

中日に移籍し、落合博満監督の指揮下でクリーンアップを打つようになったのは30代後半。
さらに自身最多の37本塁打を打って初のシーズンMVPに輝いたのが38歳のときだから、大器晩成の典型である。

オープンスタンスから左足を大きく上げ、バットを背中の後ろまで振り抜く独特の打法は、右方向への打球がよく伸びる。
今も打球は力強く、ナゴヤドームの広さを感じさせない。

これまで3割を8度、30本塁打を4度マーク。
今季も目標は3割。
過去に40歳を超えて3割を打ったバッターは師と仰ぐ落合を筆頭に6人しかいない。


ヤクルト シーズン本塁打のプロ野球記録保持者・バレンティン

昨シーズン、60本塁打を放ち、49年ぶりにプロ野球記録を更新したウラディミール・バレンティンだが、メジャーでの通算本塁打はわずか15本。
しかし、そのうち1本は超特大ホームランだった。

09年10月2日のパイレーツ戦で放ったホームランは飛距離約151メートル。
最近5年間のメジャーにおける最長記録である。

この類いまれな長打力が見事、日本で開花した。
来日1年目は31本塁打でタイトルを獲得したものの、打率・228は規定打席到達者の最下位。
三振131もワースト1位。

しかし、打撃コーチの「ボールを長く見ろ」という指導に素直に従い、年々確実性は増した。
日本野球にも慣れ、相手バッテリーの配球データを読むようになったのだから鬼に金棒だ。

昨シーズンは打率・330、出塁率・455、103四球、131打点と、ホームラン以外の数字もすべて超一流の域に達した。

もとより「当たれば飛ぶ」規格外のパワーの持ち主。
4月11日の横浜DeNA戦では三浦大輔のスライダーに軽くバットを合わせただけで、打球は右翼席へ。

昨季は7・32打数にホームラン1本を打った計算で、これはバリー・ボンズ、マーク・マグワイアに次いで世界3位。
今季はバレンティンにも彼らと同じシーズン70本塁打の夢がかかっている。


オリックス 新天地でチームを牽引する"サムライ"ペーニャの闘志

春のキャンプで話題の少ないオリックスにあって格好のスポーツ紙ネタを提供したのが、ウィリー・モー・ペーニャだった。

フリー打撃で150メートル級の当たりを連発し、ついにはブルペンの屋根に穴を開けてしまったのである。

メジャーでデビューした頃は同じドミニカ出身の"サミー・ソーサの再来"と言われたほどで、飛距離は折り紙つきだった。

ただし選球眼に難があり、ボール球を振ることが多い。
必然的に三振は増える。

ソフトバンク時代も、1年目に21本のホームランを打ったが、130三振。
2年目は打撃不振と右膝の痛みなどで1本塁打(55試合出場)に終わり、三振は52を数えた。

新天地にやってきた今シーズンは背水の陣。
キャンプでは上体に頼った打ち方から、軸足に体重を残すフォームに改造し、その成果は開幕早々に表れた。8試合で6ホームランと、昨年の大不振がウソのような変身ぶり。
4番・李大浩の抜けた穴を埋める見事な活躍で、チームの快進撃を牽引した。

ペーニャらしかったのは本拠地京セラドームで西武の菊池雄星から放った一発。
内角の直球をライナーで最上段5階席まで運んだ。

4月8日に死球で交代した際には「明日は大丈夫だよ。僕はサムライだから」と、過去2年とは別人のような闘志を見せた。


広島 エルドレッドが強力助っ人外国人の系譜に名を連ねる

死球骨折による離脱があったとはいえ、昨シーズンの打率・247、13本塁打、32打点は助っ人外国人としては物足りない。
それでも球団がブラッド・エルドレッドの残留を決断したのはペナントレース終盤の大爆発があったから。

ことに球団史上初となるクライマックスシリーズ(CS)進出における貢献度は高かった。
CS進出を決める中日戦では8回に浅尾拓也から決勝2ラン。
阪神とのCSファーストステージ第2戦でも決勝打を放つなど、ファイナルステージ進出の立役者となった。

9月以降に限れば、打率329、7本塁打、16打点。
23試合で4番に座った。

今シーズンもそのまま好調を維持し、高打率をマーク。
OPS(出塁率+長打率)は10割を大きく超える。
一流打者の証しが9割超えのOPSであることを思えば、4番打者の務めを立派に果たしている。

198センチ、122キロの巨体にものを言わせ、芯でとらえた打球はピンポン球のように夜空へ飛んでいく。
4月2日、ルーキー大瀬良大地の初登板を援護する右中間へのホームランはまさにそんな一発だった。

80年代、赤ヘル軍団が強かった頃はギャレット、ライトルら強力助っ人の活躍が光った。

今シーズンはエルドレッドの名前が、カープの強力外国人の系譜に名を連ねる。


福岡 卓越した打撃技術で球界を代表する右打者・内川聖一

現在、日本最高の右バッター、あるいは"右のイチロー"とも称されるのが内川聖一だ。
球界屈指のバットコントロールでボールを芯でとらえ、いとも容易にヒットゾーンへ運ぶ。

08年に右打者として歴代最高打率(・378)をマークして以来、6年連続3割(うち180安打以上が3回)。

FAでソフトバンクに移籍した11年は"飛ばない"統一球が採用された年だったが、内川は前年を2分以上上回る打率・338で首位打者を獲得し、シーズンMVPにも輝いた。
しかも、この年のパ・リーグにはダルビッシュ有、岩隈久志、田中将大ら現在メジャーで活躍する好投手が揃っていたことを考え合わせると、内川の実力のほどがわかる。

リーグの違いも飛ばないボールも、内川の卓越した打撃技術に影響を与えることはなかった。

これまでのシーズン最多本塁打は昨年の19本。
しかし、今季は「ヘッドスピードが最も速くなった瞬間にミートすることを心掛ける」ようになり、飛距離の伸びも顕著だ。
7割を超える高い長打率がそれを証明している。

開幕戦から、いきなり5打数4安打とエンジン全開。
7回には自ら「完璧すぎる」と語る3ランで勝負を決めた。

今シーズンの内川なら30本塁打は十分達成可能な数字である。

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