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第8回 廃墟ホテルの住人

2014-05-27

岩井志麻子のあなたの知らない路地裏ホラー

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彼が昔住んでいたアパートの近所に、廃墟となってしまったホテルがあった。
「火事があって、多くの死傷者を出したんです。幽霊が出ると評判になって客が減って、ついに廃業となりました。でも心霊スポットとして、物好きを集めるようになった。友達にもそんなのがいて、そろそろ夏だから肝試しに行こうと誘ってきたんです」

気持ち悪かったが、現場では特に何事もなかった。しかし帰宅してから、二人とも金縛りに遭って悪夢を見た。

その後も、二人とも転んだりぶつけたりした覚えがないのに体のあちこちに変な青あざができるようになった。それは手の形、指の痕に見えた。

さすがに怖くなって、二人で霊能力者のところに行ったら、意外なことをいわれた。
なんでも二人に取り憑いたのは、ホテルの火事で死んだ人達ではないそうだ。
「そのホテルが建つ前は、古戦場だったらしいんです。大昔の戦死者が埋まっている場所に、ホテルを建ててしまった。戦死者の霊が怒って、ホテルの火事を起こしたらしい。つまりホテルの火事で死んだ人達は、昔の戦死者の祟りに遭ったんです。僕らに祟ったのも、戦死者のほう。なんか理不尽さを感じましたね。おもしろがってホテルを見物に行ったんだから、火事で亡くなった人達に怒られて祟られるのはまだわかりますよ。でも戦死者の方は、僕ら関係ないじゃないですか。そんなこといったら火事で亡くなった人達も、戦争ともホテルの建設とも関係なく、ただ泊まったというだけですよ。なんか僕ら頭に来ました。その霊能力者にお願いして、戦死者はどうでもいいからホテルの火事で亡くなった方達だけの供養をお願いしました」

今も、そのホテルの廃墟はある。幽霊もまだ出続けているという。
そして地元の人はまだ、それは火事による死者の霊だと信じているらしい。


岩井志麻子(いわい しまこ) プロフィール
1964年12月5日生まれ
A型
高校在学中の1982年、第3回小説ジュニア短編小説新人賞に佳作入選。少女小説家を経て、1999年『ぼっけえ、きょうてえ』が選考委員の絶賛を受けて、日本ホラー小説大賞 を受賞。 半生を赤裸々に語るトークや「エロくて変なオバチャン」を自称する強烈なキャラクターが注目を集める。

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