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「ドタキャン」や「ハズレ」は奇跡的な感動への序章である。

プチ鹿島の連載コラム 「すべてのニュースはプロレスである」

体調不良のため、日本で予定されていた公演をすべてキャンセルしたポール・マッカートニー。チケットを買っていた方は無念だったと思う。

しかし、「プロレス界のドタキャンにくらべればまだマシ」と私は励ましたい。

最近で言うなら「リック・フレアー事件」(2013年1月)というのがあった。リック・フレアーはアメリカンプロレスのトップに立ち続けた人。豪華絢爛エンターテイナー。金髪をなびかせ、地球上をツアーして防衛戦をこなした世界チャンプだ。「リングでは裸だけど移動は高級スーツ」という誇り高き精神は、現在猫ひろしに受け継がれている。

そんなアメリカが生んだショーマンが17年ぶりに日本にやってきた。しかも大田区体育館に1日だけの参戦。レジェンドのファイトを生で見ることができる「最後の来日」とも言われた。まさに状況はポール・マッカートニーと同じだった。招聘したのは、自身もアメリカ修行中にフレアーに多大な影響を受けた武藤敬司。否が応でも期待が高まる。

私は当日、仕事が重なりあきらめていたが早く終わった。ダッシュで行けば17時の試合開始に間に合いそう。ツイッターを見ると「いま当日券売り場をフレアーがコーヒー片手に通り過ぎていった」というファンのツイートが。もう、いてもたってもいられない。

蒲田まで電車とタクシーを乗り継ぎ、1月なのに汗をかいて駆けつけたらちょうど17時!当日券も買えた。席に着くやいなやフレアーの入場テーマが。プロレスファンなら誰もが知ってるゴージャス感たっぷりのあの曲!フレアーは高級スーツで登場。「ああ、試合だけでなく最初にも登場してサービスしてくれるんだな」とワクワク。しかし、リングアナの耳を疑う一言が。

「ここで、リック・フレアー選手の欠場の御挨拶です」

「え???」

一瞬何のことかわからない。会場も静か。どうやらこの5分前に体調不良による欠場アナウンスがあって観客は白けている真っ最中だったらしい。どういうことだ!どうなってるんだ!体調が悪い?さっき「フレアーがコーヒー片手に通り過ぎていった」という優雅なツイートを見たぞ!

しかしプロレスファンは優しすぎる。リング上で始まった別の試合に声援を送っているのだ。あとで知ったのだが、抗議したファンには払い戻しもしたらしい。でもほとんどの客は帰らない。じつは、私も妙な期待を抱いてしまったのだ。

「こういうとてつもないマイナスをプラスに転化できるのか!?」という。

実際、過去には選手のドタキャンのマイナスをひっくり返した見事な興行も観てきた。それがプロレスの持つダイナミズムでもあった。

それに期待したのだ。見届けてやろうと。

この日は何もなかった。

でも「賭けにハズレながら、だからこそ奇跡的な感動を目の当たりにしたときがプロレスファンの醍醐味でもある」と、ここまで来ても自分を納得させてしまう気質というか悪癖というか。

だからポール・マッカートニーに会えなかった方は「次回」に期待してください。今回は「タメの期間」だと思ってください。

これが、長くプロレスを見続けている人間からのアドバイスです。


※念のために言っておくと、現在の新日本プロレスを始めとする多くの団体は、プロレスのそういう杜撰さ(愛すべきところでもあったが)を排除し情報公開に努めている。チケットを買ったファンは安心して楽しめる時代になっています。


プチ鹿島
PROFILE
1970年5月23日生まれ。お笑い芸人。オフィス北野所属。時事ネタを得意とする芸風で、新聞、雑誌などにコラムを多数寄稿。ラジオ番組「東京ポッド許可局」(TBSラジオ)、「荒川強啓のデイキャッチ」(TBSラジオ)、「キックス」(YBS山梨放送)ほか、TVや映画など多方面で活躍中。
ブログ:http://orenobaka.com/
ツイッター:@pkashima

「ドタキャン」や「ハズレ」は奇跡的な感動への序章である。

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