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【見えないけれど、いる男】 1/4話

2014-06-17

恐怖とエロスの貴婦人 岩井志麻子の 路地裏ホラー

仮に、梅雨子としておく。AVでは、もうギャルではなく若妻や人妻のジャンルに入れられてしまうけれど、義母ものを演じるにはまだ若すぎる、そんな年頃。

これまたAVでいえば、有名メーカーの単体モノや週刊大衆の巻頭グラビアを飾るにはちょっと苦しい。けれど、吊るされたり浣腸されたりといったハードな現場でしか使えない、なんてことはない。

企画単体モノならイケそうな、ごく普通に可愛い感じ。そんな梅雨子が、生まれて初めて金縛りに遭った、という話をしてくれた。
「今年一番の、暑い夜でした。誰かが乗っかってきましたが、そいつから悪意や怨念みたいなのは感じませんでした。姿ははっきりわからないのに、男だというのはわかったんです。首筋や頬にふれたそいつの髪の毛が、あきらかに男の髪の毛だった。その髪の毛の感触だけで、あっ、この人は知っている男だとわかった。誰、とはいえないの。本当にわからない。わからないけど知っている男」

その男との行為には、ひどく生々しいものがあった。なめられているときの舌の温度や感触だけでなく、つばの臭いも感じ取れた。

挿入されたときも、生身の男のものを入れられた圧迫感やはっきりとした快感もあった。彼女は前の彼氏と別れてから、一年以上男っ気はなかったという。
「欲求不満から、そんな夢を見たのかな、とも思いました」

金縛りは怖かったけれど、密かに待つようにもなった。何度か金縛りに遭って、見えない男とまじわった。いつも、気持ちよかった。

そして初めての夜から一カ月ほど過ぎた頃、夏川という男に再会した。
前から知っていたが、二人きりになるのは初めてだった。梅雨子はじんわりと、自分の中が湿っていくのを感じた。今の季節のように。

次週に続く



岩井志麻子(いわい しまこ) プロフィール
1964年12月5日生まれ
A型
高校在学中の1982年、第3回小説ジュニア短編小説新人賞に佳作入選。少女小説家を経て、1999年『ぼっけえ、きょうてえ』が選考委員の絶賛を受けて、日本ホラー小説大賞 を受賞。 半生を赤裸々に語るトークや「エロくて変なオバチャン」を自称する強烈なキャラクターが注目を集める。

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