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【ある路地裏の女達】 1/4話

2014-07-15

恐怖とエロスの貴婦人 岩井志麻子の 路地裏ホラー

真夏なのに妙に肌寒い雨の日、アダルト雑誌の編集者である文月くんは、社内のスタジオでけっこうハードなヌードの撮影に立ち会っていた。

文月くんは普段、裸になるのが仕事の女性にそんな質問は決してしないのだけれど。窓からの陰鬱な曇り空を見ているうちに、ふっといいたくなってしまった。
「君、どうしてこういう仕事をしているの? 」

二、三万円でヘア丸出しの全裸どころか本番もこなすジュラちゃんは、即答した。
「アイドルになるため! そうしてお金持ちと結婚するの」

文月くんも、そりゃ無理だとは突っ込めなかった。と、話をここまで聞いた私は、イッちゃってるなぁとつぶやいた。文月くんは腕組みして、考え込んだ。
「彼女らにとっては、そういう考え方が正解で正当なのかもしれない。僕らからすればイッちゃってても、彼女らはそう考えることである意味まっすぐ生きられるんだから。あと裸になるのが仕事の女の子って、死ぬ気じゃなく手首を切る子が多いでしょ。いわゆるリストカッターね。あれも、ぱっと他人から見えない手首や腕の内側にやる子はまだ、大丈夫なんですよ。人目につく肩とか、腕の外側にやりだすと危険領域ですね」

ちなみに、彼女らは整形も激しい。いずれ顔を変えてしまえば過去の仕事もなかったことになるし、違う自分で新しく生き直せるから、今の顔や体はどんなに傷つけても酷使してもかまわないのだ。ちなみにジュラちゃんは、傷はないが煙草のヤケド痕は多かった。

元芸能人を売りにAVデビューした子達はほとんど見えやすいところに傷をつけていて、ジュラちゃんのヤケドどころではなく修整が大変なのだ。そういう子達の大半は芸能人にも戻れず、いつの間にか生死すらわからない行方不明者になってしまう。


岩井志麻子(いわい しまこ) プロフィール
1964年12月5日生まれ
A型
高校在学中の1982年、第3回小説ジュニア短編小説新人賞に佳作入選。少女小説家を経て、1999年『ぼっけえ、きょうてえ』が選考委員の絶賛を受けて、日本ホラー小説大賞 を受賞。 半生を赤裸々に語るトークや「エロくて変なオバチャン」を自称する強烈なキャラクターが注目を集める。

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