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【武豊】期待と不安の入り交じる新馬戦

人生に役立つ勝負師の作法 武豊
期待と不安の入り交じる新馬戦



今年も、無事に入学式を終えた2歳馬たちが、次々にデビューしています。
競馬場全体がピリピリするGⅠレースとは、また違った意味での緊張感と華やかさ……
いくつも勲章を持っている馬主さんや調教師の先生も、どこか、落ち着かない様子で、朝からそわそわしています。

――うちの子を頼むね。
そこには、まず無事にレースを終えてほしいという我が子に対する愛情があり、でも、できれば、一生に一度のデビュー戦だからこそ勝ってほしいという願いが込められています。

では、レースで活躍する馬というのは、いったいどんなタイプの馬なのか!?

「武さんくらいになると、ひと目見ただけで、馬の力がわかるんですよね」
イベントなどで、よくこんな質問をされますが、それがわかっていたら、年間400勝以上の勝ち星を挙げ、毎年、ダービーを勝っています(笑)。

言われたことをそつなくこなす優等生タイプ。
鼻面をこすりつけてくる甘えん坊タイプ。
気位の高いお嬢様。
世話をしてくれる厩務員さんをも蹴り上げるやんちゃなタイプ……
毎年、いろんな馬と出逢いますが、第一印象と成績とは必ずしも一致しません。

性格がよく、乗り心地もバツグンで、追い切りも手応えもバッチリ。
「これは、走るぞ」と思った馬が、競馬場では借りてきた猫のようにおとなしくなったり、その逆で、「良くなるのは2~3度レースを使ってからかな」と思っていた馬が、デビュー戦でいきなり走ったりというケースが競馬には数多くあります。

馬のことをわかってあげたいし、わかろうと努力はしていますが、もしかすると、それもこちらの一方的な思い込みで。

――本番で走ればいいんでしょう。
と思っている馬や、

――今、走りたい気分じゃないですから。
そんなことを思いながらゲートに入っている馬もいるのかもしれないですね。

僕ら騎手にとってこの新馬戦は、翌年のクラシックを睨んだお見合いの席でもあり、右も左もわからない子どもをうまく導いていく先生のようでもあります。

はじめての競馬場で物見する馬。
ゲートに入るのを嫌がる馬。
騎手を振り落とそうとする馬……
そんな馬たちをなだめ、すかし、競馬を覚えさせながら、無事にゴールさせることを大前提に1着を目指す。

スタートからゴールまで、ずっと落馬の危険と隣り合わせですが、だからこそ、見えてくるものもあります。

はじめて牧場で跨ったときにダービーを意識したダンスインザダーク。
そのダンスを思い出したスペシャルウィーク。
立ち姿の美しさに、思わず、「きれいやなぁ」と漏らしたエアグルーヴ……予感が確信に変わったのはデビュー戦でした。

馬主さん、牧場関係者、調教師の先生、厩舎スタッフ、そしてファンの人たち。

たくさんの人の夢を背負って走るサラブレッド……
その強さと美しさを、競馬場で堪能してください。


■武豊 プロフィール
1969年3月15日、京都生まれ。1987年の騎手デビュー以後、通算3500勝、日本人騎手初の海外GI制覇、年間200勝突破など数々の金字塔を打ち立て、現在も活躍中。

【武豊】期待と不安の入り交じる新馬戦

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