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美人怪談師 真夏の恐怖夜話 第2夜



私が泊まったのは古い旅館でした。
部屋とお風呂をつなぐ、狭く歪んだ渡り廊下が昭和風というか暗すぎて怖いというか、なんとも雰囲気たっぷりで、まさに熱海という感じ。
最後のひと浴びをした後に、私は部屋にマッサージ師さんを呼びました。

相手が話しやすそうな若い女性だとわかると、ついすぐにお決まりの質問を投げかけてしまいます。
「なんか怖い話ないですかぁ?」
「伊豆にはねぇ、まぁ崖が多いから飛び降り自殺は多いかもですねぇ。
サスペンスドラマで最後に犯人が自殺するじゃないですか? それによく使われる崖とか本当に自殺の名所になってるし……。あ、でもひとつだけ実体験がありました!」

彼女と友達のFちゃんが星を観にいったときの話だそうです。



女2人で田舎道を車で走っていました。夏の夜は星がとても綺麗なんです。
星に見とれて車を走らせるうちに、ずいぶん遠くまできてしまっていたことに私たちは気づきました。
女2人で車泊するのは物騒かなぁと思いはしたけれど、道の駅の向かいにちょうどいい空きスペースを見つけたんです。
登山道の入口のような場所で駐車場ではないようでしたが、車を停めると、ちょうど周りに生い茂る草が程よいプライバシーになって、私たちはいつの間にか眠ってしまったんです。
朝、視線が気になって起きると、登山者や釣りの客が車を覗いていきます。
Fちゃんも起きました。

「ねぇ今朝変な音してなかった? だれか車をこつんこつんって叩いてたよねぇ」
「え? 知らないよ。人の視線は感じて起きたけど」
「それに夜中ちょっと窓を開けていたんだけど、そこから入ってきた誰かの手に腕をぐっと引っぱられたのよ! 怖かったわぁ。なんか夜中ずっと人の気配もしていて気持ち悪かった」
「えー! そんなの全然気づかなかったよ」

そのとき、向かいの道路からこっちに向かって歩いてくる人に気づいたんです。
あ、これはもう絶対ここに車を停めていたのを怒られるんだと思って、私たちは覚悟を決めて窓を下ろしました。
でも、車を覗き込む男性と目が合うと、その人はこんなことをいいました。

「あぁ、よかった。生きてた」

「え? どういうことですか?」
と聞くと、その男性は
「一週間前、ちょうどこの場所で、車中で練炭自殺した人がいたから……。
また死んでるんかと思ったけど、生きててよかったわ」
と話してくれました。



「夜中にFちゃんが感じた気配ってもしかしたらそのときの……と思うと、ちょっと怖いですよね」

自分で望んだこととはいえ、マッサージ中の怖い話は気持ちよさも半減だということがよくわかりました。


宍戸(ししど)レイ プロフィール
怪談作家にして女優、モデル、ダンサーとして活躍。英語とスウェーデン語の通訳もこなす才女。2009年「幽」第一回怪談実話コンテスト優秀賞受賞。ホラー、オカルト、スプラッター、デスメタルなどが好き。

ホームページ■http://www.shishidorei.com
Twitter■@shishidorei1

美人怪談師 真夏の恐怖夜話 第2夜

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