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美人怪談師 真夏の恐怖夜話 第4夜



「ご出身はどこですか?」
初対面の人と出身地の話になったときに必ずセットで訊いてしまうことがあります。それはご当地心霊スポットについてです。

「地元で有名な廃墟やお化けトンネルはありませんか?」
私が訊くと、Sさんはしばらく考えたあと思い出したという顔をしました。
沖縄でガラス職人をしているSさん、もともとは愛知県の出身だといいます。

Sさんが20歳の頃、車の免許を取りたての若者の間で、ドライブがてら心霊スポットを冷やかすのが流行っていたそうです。そんな仲間のうちでも特に心霊スポットが好きな先輩がいました。
彼が連れていってくれたのは、旧道にあるトンネルで……沖縄に長く居すぎて名前を思い出せないというSさんに代わって私はすぐにピンときました。
その辺りの心霊トンネルといえば、Iトンネルでしょう。
「そう、そんな名前だった! 私が行ったことないっていうと俺が連れてってやるっていうんです」
彼は何度もそこへ行っているという話でした。 



私たちがドライブに出た夜は天候が悪く、途中で大雨になりました。山道に入ってしばらく走っていると、先輩が困った顔をしています。どうしたのか訊くと、なぜか場所がわからなくなったといいます。何度も来てよく知った地元の道です。夜だ雨だというだけで迷うはずがありません。道は次第に細くなり、濡れた落ち葉で埋まっていきます。
そしてとうとう車はぬかるみにハマって完全に停止してしまったのです。

2人で途方にくれていると、後方に明るい光が見えてきました。それは同じ道に迷い込んだ別の車だでした。その車には男性が3人乗っていたので、私たちは彼らの助けをかりて車をぬかるみから押し出すことがでました。話を訊くと、彼らもIトンネルを目指していたところ、途中で道に迷い、ここへ来てしまったということでした。
来た道を数百メートルほど戻ったところに分岐点がありました。3人はIトンネルはきっとこっちのはずだから俺たちはこのまま目指しますといって行ってしまいました。
どうする? と先輩に聞かれて、せっかくだから行くと答えようとしたとき、耳元でキーンと耳鳴りのような高い音が鳴ったんです。
やっぱり行かない! 私は強く訴えていました……。



「きっとあの一連の出来事は不吉なことが起こる予告だったのだと思う」
と彼女はいいます。
結局Sさんは一度もIトンネルを訪れなかったそうです。別の日にIトンネルへ行った別の友人はこんな体験をしたといいます。
トンネルの中を歩いて往復し、なにごともなく車に戻ってくると、なんとドアが閉まらない。車体とドアの間にまるで透明の何かが挟まっているかのように。翌日車を修理に出しましたが、原因がわからず技術士も首をかしげたといいます。

なんとも気味の悪い話がいくつも生まれる場所、それが心霊の名所Iトンネルなのです。


宍戸(ししど)レイ プロフィール
怪談作家にして女優、モデル、ダンサーとして活躍。英語とスウェーデン語の通訳もこなす才女。2009年「幽」第一回怪談実話コンテスト優秀賞受賞。ホラー、オカルト、スプラッター、デスメタルなどが好き。

ホームページ■http://www.shishidorei.com
Twitter■@shishidorei1

美人怪談師 真夏の恐怖夜話 第4夜

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