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長男 松岡慎太郎氏が語った「オヤジ・立川談志マル秘素顔」 vol.1

[週刊大衆12月10日号]

「月並みですけど、この1年は早かったですね。追悼に関する取材や仕事の依頼が次から次へと舞い込んできて、それに対応するのでいっぱいいっぱい。個人事務所『談志役場』の社長という立場もあって、遺族として悲しんでるヒマもなかった、というのが正直なところです」

落語界の巨星・立川談志が世を去ったのは、昨年11月21日のこと。その一周忌を迎え、長男であり事務所の社長でもある松岡慎太郎氏(46)は、こう述懐する。

落語の歴史を塗り替えたといわれる談志は、死してなお、新たなものを生み出している。この12月8日から公開される『映画 立川談志』もそのひとつだ。
「松竹さんからお話をいただいたのは今年の2月。打ち合わせをするうち、スクリーンに落語を流すだけじゃなく、どうせなら映画として、いままでに出してない映像も織り込んで……と、話が広がっていきましたね」(慎太郎氏=以下同)

生前の談志は、その人気から"最もチケットの取れない落語家"として有名だった。それゆえ、高座での談志を見たことがない人も多数存在する。
「今回、映画にするにあたって、ファンの方はもちろん、いままで落語を観たことがない人にも、ぜひ観ててもらいたい。それでも楽しめるような工夫もしてあるんです」

メインとなるのは「やかん」(05年10月12日・国立劇場)と「芝浜」(06年12月2日・三鷹市公民館)の落語2席。
「映画館でやる以上、いろんな方に観てもらいたい。そのためには談志の代表作であり、楽しめて、感動できる作品がいいだろうと、この2つを選びました」

かつて談志は「芝浜」を終え、高座を降りるときに「登場人物が勝手に語った」といった。「神が降りてきた」と語ったこともある。それだけの作品でありながら、複雑な感情を持っていたようだ。

93年に書かれた『芝浜』の演目解説では、談志自身が次のように書いている。

〈常に常識への応援はしたくないと思っていて、そう言う落語を避けていた。嫌いだったし、あの女房に至っては、落語家として語るに落ちたやつであった。そこに共通の楽しみがあればよしとしたが、いやなものはいやだ。これらの作品の葛藤が、40年以上なのである。ひとことでいうと、その葛藤の妥協作品なのである。おまけに困ったことに、家元はこういう落語も抜群にうまいのだ。うまいからしょうがない、とするか。世の中なかなか理屈どおりにいかないが。これは解説ではない。愚痴といいわけである〉

談志には「伝統を現代に」という有名な言葉がある。落語という古典芸能が現代的感覚から徐々に乖離していくのは、ある意味では必然。しかし、談志はその距離を埋めようと苦闘を続け、その結果として、さまざまな名作をこの世に残していった。
「もともと"伝統を現代に"は政治家時代のキャッチフレーズ。それほど深く考えたわけでもなく、閃きだったそうです。でも、亡くなる3年ぐらい前に、"やっぱり、いま考えても、あのフレーズは合ってたな"といってました。
伝統といっても、ただ昔のものが残ればいいというのではない。残ったものが現代とどう関わっていくかが大切なんだ、そういってましたね」

映画には、高座以外での談志の映像も盛り込まれている。
「もともと、映像は"撮っとけ"といわれてたんですよ。それは珍しくて、ほかの噺家さんは、撮らせない人のほうが多いんです。落語は寄席の空間で演るのがすべてなんだ、ってね。本人もかつては撮るべきではない、という考えだったみたいですが、年を取ってからは、"若い頃、撮っときゃよかったな"と悔いてましたね。"映像を撮っとけ"っていうのは、落語もプライベートも同じでしたね」

私生活での談志は、どんな人間だったのか――。慎太郎氏はこう語る。
「小学生だった私に"落語とは業の肯定だ"なんて話をしてくれました(笑)。人間、行かなければならない状況でも眠いときは行きたくないし、飲んじゃいけないときに、つい飲んでしまう。それはいけない、と社会では教えるが、人間は元来そういうもの。それを語るのが落語だ、とよくいってました」

12月09日公開のvol.2に続く・・・。

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