今年も無事に3月15日を迎え、めでたく(?)53歳になりました(笑)。
競馬学校に入学した当時は、まさかこの年齢まで騎手をやっているとは夢にも思っていなくて。45歳を過ぎたあたりからは、1年、また1年の積み重ねという感じで、気がついたら、あっという間に53歳――という思いです。
上を見ると、先輩と呼べるジョッキーは片手で数えられるほど。下は毎年、後輩が増え続け、ベテラン枠に組み込まれるようになりましたが、気持ちのうえでは、まだまだ、これから。昨日より、今日。今日より明日――。
少しでもうまいジョッキーになっていたいという思いがある限り、武豊に限界はありません。今週も、人馬一体となっての全力騎乗で勝利を目指します。
桜花賞の開催より一足早く、全国各地で桜が満開を迎える卯月、4月の第1週。JRAの重賞競走は、4月2日(土)が中山でG3ダービー卿CT、3日(日)は、阪神でG1大阪杯が行われる予定です。
今年で54回目を迎えるダービー卿CTで僕が勝ったのは一度だけ。2000年の32回で、パートナーは、松田国英厩舎のフサイチエアデール。
彼女にとっては、前年の有馬記念(9着)以来となる休み明け初戦。僕とのコンビ結成は、約1年ぶりと、不安要素がなかったわけではありませんが、それ以上に、充実の5歳を迎え、どれだけ強くなっているんだろうという期待感のほうが勝っていた記憶があります。
レースは、道中5番手あたりを追走しながら、直線で力を爆発。最後は首差しのいで、彼女にとって1年ぶりの勝利となりました。
通算成績は21戦5勝。このうち、4つが僕とのコンビで挙げたものです。道中の位置取り、GOサインを出したときの反応、息遣い、抜け出したときの脚色……。今でもそのすべてを覚えています。
でも、なぜか印象に残っているのは、あと一歩届かず、涙を飲んだ桜花賞のレース……。こうした負けの一つ一つが、今の武豊につながっているんだと思うと、うれしいような、悲しいような、ですね。
大阪杯は、G1に昇格した17年、キタサンブラックとともに、“初代王者”として歴史にその名を刻むことができました。
この年、キタサンブラックはすべてG1に出走し、残した成績は6戦4勝。これまで数多くの名馬に乗せていただきましたが、キタサンブラックは、その馬たちとはどこか違っていて。勝負根性の塊というか、揺るぎない強さというか。熱い魂と、真の逞しさを持っている馬でした。
大阪杯は、それ以前にも、フレッシュボイス、スーパークリーク、メジロマックイーン、マーベラスサンデー、エアグルーヴ、キズナという最高のパートナーたちとのコンビで優勝していて、僕とは縁の深いレースです。どうか楽しみにしていてください。
「武豊 人生に役立つ勝負師の作法」最新記事