「人生は一度きり上手に死なんともったいない!」久坂部羊「多くの「看取り」を経験した作家の巻」珍談案内人・吉村智樹のこの人、どエライことになってます!の画像
久坂部羊

 関西に生息するアヤシくてオモロい人たちに、大阪出身・京都在住の人気ライター・吉村智樹が直撃インタビュー!

■安らかに死んでいくために…現役医師兼作家の新作が話題!

 コロナ禍で連日「死者数」が報じられ、死がいっそう身近に感じられるようになった。そんな折に発売された『人はどう死ぬのか』(講談社現代新書)が話題だ。

 臨終の事例を紹介しつつ、「この世を去る心構え」を説くこの新刊は、発売後、たちまち増刷がかかるヒット作となった。

 著者は作家であり、現役の医師である大阪在住の久坂部羊さん(66)。末期がん患者の治療に苦悩する医師を描く医療小説『悪医』や、自殺の是非を問う問題作『R.I.P. 安らかに眠れ』など、死に真正面から向き合う作品を執筆し続けている。

「医師は神ではない。病気を治す技術はあっても、死をなくすことはできない。人はいずれ、必ず死ぬ。医療は死に対して無力なんです。それを理解せず、入院して治療すれば死なずにすむと思っていると、悲惨な結果を招くんです」

 これまで数えきれないほどの看取りを経験した久坂部さん。あまたの往生際に立ち会い、次第に「人には“上手な死に方”と“ヘタな死に方”がある」と考えるようになった。

「自分は、もうすぐ死ぬという現実を受け入れ、死に抗わなかった人たちは、穏やかに亡くなっていきました。“上手な死に方だ”と感心したものです」

 とりわけ「上手」と感じたのは、自分の父親だ。赤瀬川原平のベストセラー『老人力』に影響を受け、体が動かなくなったら「ゆっくり力」、視聴覚が不自由になると「あきらめ力」がついたと衰えを楽しみながら、安らかに人生の幕を引いたという。

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