■江川卓や松坂大輔…剛速球伝説
まずは剛速球伝説から。「僕らの現役当時でいえば、やっぱり江川(卓=66)はちょっと別格だったよね」
こう語るのは、80年代に中日不動の1番打者として鳴らした田尾安志氏だ。
相手は社会現象ともなった“昭和の怪物”。スピードガンの数字とは異なる“体感速度”では、いまだ「史上最速」に、その名を挙げるプロOBも数多い。
「ボールが手元で伸びるから、ミートポイントで完璧に捉えたと思っても、バットの上っ面で叩いてしまう。球場のスピードガン表示では槙原(寛己=58)のほうが速かったけど、当てる難しさでは圧倒的に江川のほうが上だったね」(前同)
同じ系譜では、昨季引退した“平成の怪物”松坂大輔(41)も忘れえぬ存在だ。
「1999年、東京ドームでのデビュー戦の初回、日ハムの片岡篤史を155キロのストレートで三振に切って取った。強打者・片岡に、空振りで膝をつかせた剛速球は、松坂伝説の幕開けでした」(前出のデスク)
同じ本格派投手でもあった藪恵壹氏は、こう言う。
「回転軸がブレないジャイロ気味の重い球を投げていた。ただ、投手の立場からすると、彼の真骨頂は左打者の内角をえぐるフロントドア。三塁側のプレートを踏んで、内角いっぱいに決めきるなんて、そうできる芸当ではないですよ」
現役の速球派代表は、NPB歴代1位となる165キロの記録を持つ大谷翔平(27/エンゼルス)が筆頭だろう。だが、同学年である阪神の藤浪晋太郎(28)も、最速162キロと別次元のストレートを投げている。
「彼の真っすぐは、松坂と違って、元から回転軸がやや斜めに傾いている。だから、それがアウトローに決まると右打者には手も足も出ない反面、危険球となるインハイにも抜けやすい。臨時コーチで入った山本昌さんも、彼の手首を、なんとか立たせようと試みたようだが、結局、直ってはいないよね」(前同)