■最盛期の王貞治や長嶋茂雄と真っ向勝負

 彼ら球界剛腕投手の“元祖”は、やはり“カネやん”こと金田正一(故人)。高校を中退した17歳のプロ1年目にして、“ミスタータイガース”藤村富美男に「よく僕の速球が打てましたね」と言い放ったヤンチャぶりは、今も語り草だ。

「佐々木朗希は現時点で“世界最高の投手”と個人的に思いますが、もし金田さんがご存命なら、おそらく“ワシには敵わん”と言ったはずです」(前出の田尾氏)

 だが、それを単なるカネやん節と捉えるのは、早計。

「“体感は160キロ”ともいわれる剛速球を、あれだけ投げて、14年連続20勝。続けることの難しさを知っている僕らからすれば、そこは、やっぱり同意せざるをえませんよ」(前同)

 最盛期の王貞治長嶋茂雄と真っ向勝負したストレート。はたして、スピードガンがあれば、何キロを表示したのだろうか。

■一級品のフォーク

 お次は予想を超える変化で打者を翻弄した、「魔球」の系譜に目を向けてみよう。

 剛速球が売りの佐々木朗希は、決め球のフォークも一級品。くだんの完全試合でも、実に15個もの三振をそのフォークで奪っている。

「同世代の佐々木(主浩=54)さんや野茂(英雄=53)のフォークも、変化量はとんでもなかったが、ホームベースのはるか手前でワンバウンドすることも多々あった。その点、彼のフォークは、見逃してもストライク。しかも、左打者の膝元に向かう軌道で、やや変化もする。あれを見極めるのはプロでも、そうはできません」(藪氏)

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