マキタスポーツ(撮影・弦巻勝)
マキタスポーツ(撮影・弦巻勝)

 芸人、ミュージシャン、文筆家、俳優……。今では幅広いジャンルで活動してますけど、ここまでやってきた原動力は“反骨心”ですね。売れている世界や人間に対して、「人気取りのためにゆるいことをやってんじゃねえよ。俺はもっと違う形でムーブメントを起こしてやる!」という気持ちが強かったんです。

 そのため、28歳でピン芸人としてデビューしてから、テレビ番組のプロデューサーに「こんなことやりたくない!」と言って喧嘩したり、ネタ番組のオーディションで、5分内と決められているのに、ネタを10分以上やったり……。自分のスタイルを一切崩さなかったので、仕事がどんどん減っていきました。

 子どもができて結婚することになった31歳の頃、心に決めたのが本格的なバンド活動を始めること。もともと“面白いミュージシャン”を目指していたので当然の行動だったんですけど、芸人仲間にはあきれられましたね(笑)。

 その後、音楽イベントを何度も企画して、個人のレベルではありえないくらい大規模なフェスを主催したりしました。ただ、赤字が続き、借金が膨らむばかり……。そのうえ、妻が2人目を妊娠したものだから、ついに、渋谷のホテルでアルバイトを始めたんです。

「俺は誰も手がけたことがないイベントをやってるんだ!」そんな自負があったからこそアルバイトもこなせたんですけど、あれは2007年の年末。アルバイトの最中に、テレビで見ちゃったんですよね。『Mー1グランプリ』でサンドウィッチマンが優勝するシーンを……。

 僕とほぼ同期で、ライブにもよく一緒に出てたんですけど、無名だった彼らがチャンピオンになった。

「やべえな。こんなことしてる場合じゃないかもしれない……」

 そこで着手したのが、バンドとイベントをいったん休止すること。そして、それまでやってきた音楽と笑いを融合させた芸を“オトネタ”と名づけ、ピン芸人として続けていくこと。「やりたいことをやる」という反骨心を持ちつつ、“売れる”ということに真剣に取り組んだんです。

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