■サンマやサバ、マグロも危機

 サケと並ぶ秋の味覚の代表格といえば、サンマだ。長らく庶民に愛された大衆魚だったが、近年は中国など周辺諸国の乱獲で、水揚げ高が減少。今や“高級魚”になってしまったのは、ご存じの通りだ。

「原因は他にもあります。イカと同様に地球温暖化の影響を受けて、群れの場所が沿岸から海水温の低い沖合に移ったんです。加えて、世界的な原油高が燃料代の高騰につながり、漁船は沖合まで獲りに行けません。今秋の水揚げも望めないでしょう」(山田氏)

 安くてうまい魚の代表格、サバにも危機が迫っている。

「大型のものは、多くを輸入品に頼っています。その一大産地はノルウェーですが、ウクライナ侵攻の影響でロシア上空が飛行禁止となり、空輸が難しくなっています。回転寿司などで人気のサーモンにも、同じことが言えます」(前同)

 同様に、欧米との金利格差による円安で“国民魚”マグロの輸入量も低迷しており、「年末には供給不足による価格上昇が間違いなく起きる」(水産会社社員)というから、踏んだり蹴ったりの状態だ。

■マイワシやブリは豊漁だが

 その一方で、温暖化による生息域の「魚種変更」により、“豊漁”の魚もあるという。

「マイワシやブリは、よく獲れるんですが、単価が安いのがネック。また、その土地のブランド魚となり、高値がつくには10年は必要です。値段が安いと、遠隔地から輸送するコストで儲けが出ません。苦境に音を上げて廃業する漁師が増えれば、日本の漁業は、さらに衰退するでしょう」(業界紙記者)

 このまま、多くの魚が食卓から消えてしまうのか。山田氏は、発想の転換が必要だと言う。

「天然ものではなく、養殖ものに目を向けてもいいかもしれません。アサリやシジミで問題になった産地偽装の心配もありませんし、養殖技術の発達で、おいしくなってきました」

 日本人も、「食種変更」を求められているのかもしれない。

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