■「一番旬で時代を感じさせるカッコいい人が選ばれる」

 ちなみに17年の『土曜あるある晩餐会』ではオーディションに携わった脚本家の三条陸氏が「(ライダーは)一番旬で時代を感じさせるカッコいい人が選ばれる」「菅田将暉君なんかは、キラキラしてましたね」としていた。

『W』の冒頭は菅田の顔面アップから始まった

『W』は現在も根強い人気を誇り、17年からは正統続編である『風都探偵』(小学館)が『W』メインライターだった三条氏の脚本で漫画化。今年にはアニメ化も果たしている。

「次に“主人公以外のライダー”についてです。平成一期については第2作目『仮面ライダーアギト』(01年)で“氷川誠/仮面ライダーG3”だった要潤さん(41)というのが、誰もが納得するチョイスでしょう。

 19歳の未経験なのにいきなり説明セリフの多い刑事役だったこともあり自他ともに認めるひどい大根役者でしたが、役者としてのオーラに関しては『アギト』のメインキャラでダントツでした。劇場版では実質主役でしたね。

 ちなみに『アギト』は最高視聴率13.9%、番組平均視聴率11.7%という平成ライダー最高記録を誇っています。翌年の『龍騎』と並び、“多人数ライダー”“思想の違う仮面ライダー同士が戦う”という令和の現在までつづく作風の土壌になっていますね」

現在からは想像もつかない棒読み。長台詞になると目も当てられないが、徐々に演技力が向上していった

 20年に要が自身のYouTubeで明かしたところによると、2次審査が面接で4次審査まであり、最終審査は「すき焼きを食べながら世間話」だったこと、合格後、監督に「(オーディションに)入ってきた瞬間に“氷川誠”が入ってきたと思った」と言われたこと、演技が駄目すぎて石田秀範監督にシーンをお蔵入りにされたが、後にガッツを認めてくれて役者として目覚めたことなどを明かしている。

要潤の公式YouTubeより。『アギト』キャストや脚本家を招いての座談会などを積極的にしてくれている。

 ちなみに、21年7月に『テアトルロード』の対談企画では「なぜ要潤を選んだのか?」という話題の際に演技は下手だったことを認めたうえで、

「一番大事なのは“人と話をできること”。口がうまいかうまくないかというより、相手の言ってることがわかって、それに対する自分の考えをレスポンスできる、そういう会話力が一番大事なことだと思っているんですね。

 ライダーのオーディションをやるときに一番大事なのは、芝居テストよりも雑談だったりするんですよ」(白倉伸一郎プロデューサー)

 と、明かしている。「すき焼きで世間話」とは、そういうことだったのだろう。

 その後、要の演技力は鍛え上げられ、劇場版作品『PROJECT G4』ではアドリブによる名シーンを生み出すまでに。放送終了後も名バイプレイヤーとしてドラマに映画に引っ張りだこの役者へと成長した。

■現状のトップは吉沢か

「最後に二期の“主役以外のライダー”ですね。『ジオウ』出身の渡邊さんもこれに該当します。初期から登場するライダーや、クールの節目などから登場するライダーなどがいますが、最近話題を呼んでいる俳優はこの“二期の主役以外のライダー”が増えている傾向にあります。

 思いつくだけでも21年に『青天を衝け』でNHK大河ドラマ主演を果たした吉沢亮さん(28)や、『チェリまほ』(テレビ東京系)がヒットした赤楚衛二さん(28)、『ぐるナイ』(日本テレビ系)の『ゴチ』レギュラーの高杉真宙さん(26)と演技派がズラリです。現状は、吉沢さんがトップにいる感がありますね」

 吉沢が出演していたのは13作目の『フォーゼ』(11年)。主演が福士蒼汰で2号が吉沢、しかも無名時代の横浜流星(25)や滝沢カレン(30)まで単発ゲストで登場していた、いまとなってはとんでもない作品である。

生身でアクションをしたシーンも紹介されている

『仮面ライダー』では初となる本格的な学園ドラマを主軸にした作品で、「仮面ライダー部」「黒幕は理事長」「心の闇に付け込まれて怪人化しかけている生徒たちを助けるのが目的」といった独自性の強い設定が目白押し。東日本大震災の影響もあり、明るく楽しい作風となっていた。

「吉沢さんが演じていたのは“朔田流星/仮面ライダーメテオ”。人当たりのいい気弱な好青年、というキャラ設定で仮面ライダー部に潜入しますが、実際は星心大輪拳という格闘術の使い手で、ブルース・リーよろしく“ホワチャー!”と鳥音を叫びながら戦います。のちに映画『銀魂』などでアクションを見せる吉沢さんですが、『フォーゼ』の頃から生身の格闘シーンが多く将来有望でした。本性であるクールな表情とのギャップや初期の主人公たちとわちゃわちゃしながらも心の中で毒づいてる様子など、当時から演技力もありましたね」

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