2016年のダービー馬、マカヒキが現役生活に別れを告げ、種牡馬として新たなる馬生を送ることになりました。
父・ディープインパクト、母・ウィキウィキ母父・フレンチデピュティ。オーナーは金子真人ホールディングスで、調教師は友道康夫先生。生涯成績は28戦6勝で、獲得賞金は6億円超え。手にしたG1タイトルは、日本ダービーの一つだけですが、9歳まで大きなケガもなく走り続けた彼は、“名馬”と呼ぶにふさわしい1頭です。
デビュー戦で手綱を取ったのは、ミルコ(デムーロ)。2、3戦目がクリストフ(ルメール)で、皐月賞、ダービーでコンビを組んだのが川田将雅騎手です。
そのダービーの着順は、1着がマカヒキで、2着がクリストフとコンビを組んだサトノダイヤモンド。3着が皐月賞を制したエビちゃん(蛯名正義)とディーンマジェスティで、4着が僕とエアスピネル、5着がミルコとリオンディーズと、縁が複雑に交錯していますが、これが競馬の難しさであり、面白さです。
僕が、このマカヒキと初めてコンビを組んだのは、18年の天皇賞(秋)です。結果は7着に終わりましたが、彼の力強い走りと柔らかい乗り心地は、「さすがダービー馬!」と、騎乗中につぶやいていたことを思い出します。
2度目となった1年後の天皇賞(秋)は、らしさが感じられないまま、早い時計にも対応できず10着に惨敗。3度目が、同年のジャパンカップです。このときは、結果は考えず、どう乗ればマカヒキを復活させられるか……その一点に集中した騎乗でした。
最後方で脚を溜め、最後の直線で勝負――。結果は4着でしたが、狙い通りのレースで、復活の兆しを感じられたと思います。
そして最後が、彼のラストランとなった、今年8月21 日の札幌記念です。3コーナーでついていけなくなりましたが、それでも彼は最後まで懸命に走り続けてくれました。
いつか、彼の血を引き継いだ、タフさと粘り強さと強さ、それに速さがミックスされた産駒に乗るのを楽しみにしています。本当にお疲れ様でした。
それでは、今週の騎乗馬です。
今週末から、秋のG1シリーズ後半戦に突入。第1弾は、阪神競馬場を舞台にした牝馬ナンバーワン決定戦、エリザベス女王杯です。
当初、“エリザベス女王即位70周年記念”という副題がつけられていましたが、女王の崩御により取りやめ。半旗を掲げて施行されることになりました。
今年、このレースで僕のパートナーを務めてくれるのは、オルフェーヴル産駒のクリノプレミアム。初めてのコンビ結成です。
オーナーとして、生産者として、一人の競馬ファンとして、競馬を愛してくださったエリザベス女王のお名前に恥じないレースを届けたいと思います。
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