豊川悦司(撮影・弦巻勝)
豊川悦司(撮影・弦巻勝)

 僕が「色っぽいなぁ」と感じる女性は、“自由な人”です。性別に縛られず、やりたいことをやり、自分に正直な女性を見ると、とても魅力的に感じます。

 今回、映画『あちらにいる鬼』で共演したお二人、寺島しのぶさんと広末涼子さんも、非常にかっこよくて、色っぽい女性たちでした。

 寺島さんが演じた「長内みはる」のモデルは瀬戸内寂聴さんですが、彼女も、とてつもなく男前で、非常に色っぽい女性だったと思います。

 僕が演じた「白木篤郎」という作家は、井上光晴さんがモデルです。みはると篤郎は、いわゆる不倫の関係で、広末さん演じる白木の妻と、奇妙な三角関係となっていく。

 映画の中で描かれているこの関係は、ほぼ事実なんですね。しかも、原作小説を書いた井上荒野さんは、井上さんのご長女。生前の寂聴さんから当時の話を聞いて小説を書かれたというのですから、ここにも一人、色っぽい女性がいることになります。

 寂聴さんと井上さんが恋に落ちたのは昭和40年代で、まだスターがスターでいられた時代。二人とも間違いなく文学界のスターですから、この道ならぬ恋は、今とはまったく違った受けとめられ方をしていたのではないでしょうか。

 今回の作品もそうですが、僕は実在の人物を演じることが多いんです。資料が残っているから役のイメージにアプローチしやすい反面、どう演じてもその人物を知っている人から「ここが違う」と言われる可能性も高い。

 その点、架空のキャラクターは、脚本家やプロデューサー、ディレクターと一緒に新たな人物を、自由に作っていく楽しさがあります。自分としてはやはり、オリジナルの役のほうがワクワクしますね。

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