■「歌舞伎の良さが子ども番組に45年以上前に反映されて、いいところが受け継がれている」
――戦隊は海外でも人気なんですね。
「もともと戦隊ヒーローはルーツが歌舞伎なんですよ。歌舞伎の良さみたいなのが海外に伝わってていいな、と思いますね。
戦隊ヒーローでのいわゆる“名乗り”も、元は歌舞伎の『白浪五人男』からきていると言われていまして。
日本人が戦隊ヒーローを観てなぜ気持ちいいかっていうと、歌舞伎のDNAが組み込まれてるところがあるからだと思うんです。日本人が好きな様式美によって見ていて気持ち良く感じるのだと思います」
――名乗って役割分担して協力して倒す、と。
「そうですね。海外に輸出したときに“ヒーローたちは何で名乗ってるの?”“名乗ってる間に攻撃されちゃう”って言われたらしいですが、“いや、ここは絶対にいるんです。日本の歌舞伎の中にはこういう口上がありまして、日本の子どもたちはここでグッとくるんです”と説得して、名乗りシーンを削らせなかったそうです」
――そのやり取りに情熱を感じますよね。戦隊はある意味で現代版歌舞伎ですね。
「そこまで言っちゃうと歌舞伎ファンに怒られてしまいかねませんが(笑)。歌舞伎の良さが子ども番組に45年以上前に反映されて、いいところが受け継がれている感じですよね」
――時事ネタと伝統の良いところがくっついて、ということですね。
「それに、最新技術が加わってですね。あと、戦隊作品は、いかに“マンネリしないか”を念頭に置いてやってこられているので、そこも素晴らしい。毎回、新しいものを見せてくれるので、こっち(観る側)はどんな方向に行こうが、とにかくずっと楽しませていただくという感じです」
――篠宮さんは2児のお父さんです。特撮作品は子どもとのコミュニケーションツールとしての側面もありますが、それを実感することはありますか?
「そうですね。子どもと戦隊作品の話はしますし、いままで一人で行っていた映画やイベントも子どもと行ったりとかもするようになりました。
で、面白いのは、子どもの意見と、ひとりでじっくり見たときの自分の感じ方が全然違ったりするんで、二度おいしいじゃないですけど、“こういう視点で見るんだ!”っていう驚きや発見があります。
もう自分は大人になっちゃったので、フラットに観てるつもりでも、“前のあの感じに似てるな”とか邪念とかも入ってきてしまうんですが、子どもはそんなの関係なしに“カッコいい!”とか“どうなっちゃうの!?”とか、すごいピュアな意見があるので、そういう意見を聞いていて楽しいですね」
――子ども向け番組ではありますが、ストーリーがハイレベルで、たまに子どもには分からないシーンもありますよね。
「たしかにそうです。でも、よくよく考えたら自分が子どもの頃の作品も、“拉致されてしまう作品”がいくつかあったんです。おそらくそれらは、“中国残留孤児”とかがテーマに作られているもので」
(※中国残留孤児:戦後の混乱で親と別れて中国に取り残されてしまった日本人の子どもたちのこと)
――なるほど。
「子ども心に、“うわ連れ去られてる。めっちゃ悲しい……”って思っていました。当時はそれが何のモチーフかはわからなかったけど、“悲しい”だけ残っていて。大人になっていろいろな情報を知ってから見たときに“ああそういうことか”って。
でも、それ抜きにいまだに心に残っているということは、4、5歳の自分にとってかなり衝撃的な映像だったわけで……ただ、トラウマ的にこんな映像を残すのも、それはそれでいい気がするんですよね」