■「これまでやってきた麻雀を、今勝てないからって僕は否定しない」

――メンタルが強靭になったと。

「そうですね。起きる事象に対して一喜一憂するのも麻雀の面白さですけど、それが非常に理不尽なものと感じたときに、“理不尽なことが自分に起こってるな”と落ち着いて考えられるようになったというか。麻雀はそんなことが何割も占めてることが多いんですよね。特に負けた側は。

 一方で、勝った側は“自分がこうやったから、当然こうなっただろ”って錯覚しがちですけど、実は負けた側からしたら“そんなの理不尽だよ”っていう応酬が起こっている」

――理不尽すぎる“運の良さ”みたいなものですね。

「そうですね。いろいろ麻雀の概念が僕の中にあって。当然ルールによっても変わってきますけど、『Mリーグ』の場合は、麻雀の腕前は当然として、要は選ばれた“強運”の持ち主が集まっているんですよね。

 でも、僕は強運だから選ばれたわけじゃない。こういう言い方は語弊があるかもしれませんが、僕は、今まで麻雀界でいろいろ積み重ねてきたものがあって選ばれている。ただ、選ばれていることは確かに強運だったりもするわけですが……でも、僕はその辺で、まず他のMリーガーと同じ土俵に立ててないと思えて。

 彼らにいつも“運”で負けている、というわけではなくて。なんだろう、考えた方としてですよ。もうそう考えるしかないな、と」

――でも今、過去のツラい4年間を経て、萩原さんの様子が吹っ切れたような、迷わず行く感じになってきたのを感じていました。

「もうね、しょうがないんですよ。当たるかどうか、リーチになるかどうか、上がれるかどうかわからない。

 でも“自分が勝つためにすべきことは何か”っていう信念を、これまでやってきた麻雀を、今勝てないからって僕は否定しないので。そういう麻雀を打ってきたから今ここに入れるって言うのも大きいし、成績が悪いから“ああいうことしてるからダメなんだよ”って声もありますが……。

 この間の勝てた試合を見てもらってもわかると思いますけど、發(ハツ)と四索(スーソー)のシャンポンでリーチに行かなかったやつ。あれは、ハツを一発でツモっていたら“何でリーチしないんだよ”って言われる。でも、上がり牌がある自信はなかったし、攻められたら勝負になる手でもないから、リーチはしなかったんですよね。でも、それが上手くいったら、今度は“神プレー”みたいに言われるわけじゃないですか」

――そうなんです!

「多くの人が誤解していると思いますが、成績の悪い人が勉強していないわけじゃないんですよ。僕だって勝ちたいし、打ち筋とか自分なりに研究していることはたくさんあるので……だから、そういうのを、ああいう場面で見せられたことで……まあ1つ。でもまあ何だろうな、これだけ結果が出ないとそう思われても仕方ないし、それを否定するつもりもない。僕も全部受け入れようと思っています」

麻雀プロの「仕事論」を語る萩原さん
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5