ユーイチが、2023年度の調教師試験に合格。新たに福永祐一先生となるため、2月いっぱいでジョッキーを卒業することになりました。
――もったいない!? まだ45歳。3年前にキャリアハイとなる134勝をマーク。一昨年が123勝。昨年は、カフェファラオでのフェブラリーS、ジオクリフでの皐月賞という2つのG1を含む101勝。この数字だけを見ると、確かに、もったいないのかもしれません。
しかし、です。まだまだ乗れるのはユーイチ自身が一番分かっていることです。それでもなお、調教師になりたいと思ったということは、誰よりも本人が、それを望んだという証です。
僕が、武邦彦の息子と呼ばれたように、ユーイチは、“天才ジョッキー”福永洋一の息子として、デビューから大きな注目を浴びました。プレッシャーもあったと思います。
そのユーイチがもがき、苦しみながら、自身の武器として身につけたのが、独自の競馬理論です。
とにかく研究熱心で、ジョッキーの動作解析をしたり、戦法・戦術を深く掘り下げたり……理論派といえば福永祐一、というところまで突き詰めたのは、ユーイチだからできたことだと思います。
ユーイチとの思い出は、話し出したら、いつまでだって話していられるほど、たくさんあります(笑)。
小学生だったユーイチ、中学生のユーイチ……。競馬学校を卒業し、ジョッキーとして僕の前に立ったユーイチは、隙を見せたら襲いかかってくるような、油断のならないジョッキーになっていました。
レースでの思い出も、山のようにあります。
5度目の日本ダービーを制したキズナの前に立ちはだかったのが、ユーイチとエピファネイアのコンビでした。その差、半馬身。ゴール前は、しびれるような叩き合いでした。
その逆、ユーイチが1着で、僕が涙をのんだのが、05年のオークスです。僕のパートナーはエアメサイアで、ユーイチが騎乗したのはシーザリオ。最後の最後でハナ差交わされた悔しさは、今でも忘れることができません。
寂しさは、もちろんあります。でも、それ以上に、ユーイチが自分で決め、自分で勝ち取ったものですから、“おめでとう!”です。
理論派の福永祐一先生が、どんな馬を育てるのか。すごく楽しみだし、福永先生から騎乗依頼をいただける騎手でいたいと思います。
暦が1月から2月に替わり、週末の2月5日はエアロロノアとのコンビで、G3・東京新聞杯に挑みたいと思います。
目指すは、昨年3月以来の勝利と初重賞制覇。寒さに負けない熱い競馬をお見せするので、ぜひ、競馬場に足を運んでください。
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