僕が初めてカッコいいと思った騎手は……親父の武邦彦です。
ふだん家にいるときは、無口でパッチ( 股引)をはき、ゴロゴロしている姿しか思い浮かびませんが(笑)、馬に乗っているときの親父は、口にするのは恥ずかしいんですが、僕の中ではヒーローでした。
最近、レースに勝った後にやるガッツポーズ……手のひらを開いて片手を上げるポーズや、なにげないしぐさが、親父に似てきたと思う瞬間があります。そんなときは、照れくさいような、うれしいような。
ユーイチ(福永祐一)のお父さん、“天才”福永洋一騎手は、部屋にポスターを貼るほど憧れていたジョッキーでした。
とにかくスマートで、はらりと馬に乗って、サーッと走って、さらりと勝っちゃうみたいなイメージです。オーラがあるというか、少年だった僕の目には、キラキラ輝いて見えました。
福永洋一騎手の本当のすごさを知ることになったのは、僕がジョッキーになってから。そのすごいところを話し出したら、ひと晩中、話しても話し足りないですが、一つだけ挙げるとすれば、軸がまったくブレないところ。重心と馬の支点とが、究極と言っていいほど、ピッタリ合っているところでしょうか。
いつか僕も福永洋一騎手手のように、うまいと言われる騎手になりたい――。それは今も昔も、変わっていません。
外国人ジョッキーにも憧れました。
アメリカのクリス・マッキャロン(通算7141勝)と、ゲイリー・スティーヴンス(通算5187勝)もカッコよかったし、チリのホセ・サントス(通算4083勝)も、憧れたジョッキーの一人です。
――今、誰が一番カッコいいか? 僕の中では、フランキー・ランフランコ・デットーリです。
ただ、そこにいるだけでカッコよくて、華があるのは彼だけ。世界中のジョッキーが、“一度でいいから、フランキーと同じレースに乗りたい”と思っているはずです。
さぁ、それでは、今週末の騎乗馬についてです。2月11、12日は、東京、小倉の2場に加え、阪神競馬がスタートします。
重賞レースは、東京が2月11日のG3クイーンCと、12日のG3共同通信杯。阪神が、12日のG2京都記念という3つ。僕が参戦するのは京都記念。パートナーは、僕が心待ちにしていた……そうです、昨年のダービー馬・ドウデュースです。
凱旋門賞後に減っていた体重も放牧を挟んで回復。2週前追い切りでは、彼らしい豪快なフットワークだったという報告をいただきました。
今春の最大目標は、3月25日、メイダン競馬場で行われるドバイターフ。そのためにも負けられないし、恥ずかしい競馬はできません。期待していてください。
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