■赤ちゃんが言葉を覚えるように、日本語を覚えました

 日本に来て活動していると、よく、語学のコツを聞かれるんですが、ズバリ、とにかく使うことですね。使って失敗しても、その経験が勉強になりますから。僕は英語を日本語に置き換えるのではなく、赤ちゃんが言葉を覚えるように、日本語を覚えました。その結果、とても素直に身につけられたけど、頭の中で英語と日本語がつながっていないから、通訳はできないんです。もっと言うと、最近は英語を忘れかけていますよ(笑)。

 そんなふうに、大好きな日本語で歌い続けてきて、今年はなんと俳優として『湯道』という映画に出演することになりました。

 湯道とは、入浴を、茶道や華道、書道のように「道」として極めるという、とても日本的な考え方なんです。舞台は「まるきん温泉」という銭湯で、僕はお客さんの役。アメリカにはもちろん銭湯はないし、日本でも一度くらいしか行ったことがなかったのですが、最高でした!

 しかも、大きな湯船に裸でつかって、女湯にいる天童よしみさんとデュエットするシーンまであるんです。とても気持ちが良かったし、役の気持ちになって、歌うというよりも自然と歌が出たという感じでしたね。

 これって、カバー曲に似た部分もあるな、と振り返って思ったんです。日本人ではない僕が、自分にはない経験を、これまで出会ったことや、友だちの経験からイメージを膨らませて、誰かの心に届くように歌うわけですから。

 今年でデビューして10年。これからも、オリジナルの曲も歌っていきたいし、カバーの新たな企画もいろいろと考えています。海外の曲を日本語で歌うとか、日本の名曲を海外
のプレイヤーと一緒にレコーディングするとか、イタリアでオーケストラと歌謡曲を歌うコンサートなんていうのも、いいですよね。

 他のアーティストのプロデュースもしたいし、3人の子どもたちと一緒にステージもやりたい。そして、今回の映画で俳優というチャンスをもらえたので、演じるということもやっていきたいですね。次は、悪役をやってみたいかな。マフィアなんて面白そうだけど、どうかな?

クリス・ハート(くりす・はーと)
1984年8月25日生まれ。アメリカ・カリフォルニア州出身。2012年に『のどじまんTHEワールド!』で優勝し、13年にカバーシングル『home』でデビュー。リリースしたカバーアルバムやオリジナル曲がヒットし、同年、NHK『紅白歌合戦』にも出場。

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