■金を使わず時代を作った名将・野村克也と落合博満
他方、親会社の金がアテにできない状況で、率いたチームに“黄金時代”をもたらしたのが、野村克也と落合博満の名将2人だろう。
現役時代に“野村ID”の薫陶を受けた、ヤクルトOBの秦真司氏が言う。
「あの9年間は、野球の奥深さに初めて触れて、組織の力で勝つということを学ばせてもらった期間でした。今では当たり前のデータ活用をはじめ、従来の野球観がガラッと変わった。あのときチームに根づいた“野村の教え”は、今の“髙津ヤクルト”にも間違いなく受け継がれています」
そんな秦氏は、2005年から2年間、落合中日でも1軍バッテリーコーチを担当し、リーグVに貢献。07年には中村紀洋を復活させるなど、“再生工場”と称された野村野球にも通じる辣腕を振るった。
「与えられた戦力を生かす采配や、選手への観察眼という部分は両者共通ですが、ことミーティングに関しては、中日時代はやっても年に3回ほど。野村さんが口うるさい母親としたら、落合さんは多くを語らずただ黙って見守る父親、という感じでしたね」(前同)
■チーム作りにおいて根本的な違い
そして、チーム作りにおいて、根本的な違いがあると語る。
「落合さんは“契約満了までは自分の責任を全うする”ということを徹底された方。今にして思えば、野村さんにはあった“人を育てる”という側面は、そこまで感じられなかった。
両チームの間にある現在の差は、ここが要因なのかなと思いますね」(同)
ドラフト戦略、選手の育成、オーナーの志、親会社の資金力、監督の手腕……そのすべてが噛み合う“黄金時代”が、読者諸兄のひいき球団に訪れることを、祈りたい。