■正捕手の梅野隆太郎の骨折も坂本誠志郎がカバー
勝負どころの8月には正捕手の梅野隆太郎(32)が死球を受けて骨折するも、その穴は坂本誠志郎(29)が見事にカバーしてみせた。
「岡田さんと平田ヘッドの間では“今は、捕手も複数人で、うまく回す時代”という共通認識が当初からあった。どちらかが仮に欠けても、もう一方が必ず残る。梅野の離脱は想定外だったにせよ、チームとしての“備え”は万全だったということでしょう」(野口氏)
その坂本は、女房役として村上&大竹の覚醒に、ひと役買った陰の功労者だ。
先発マスクで開幕9連勝を飾るなど、もともと定評のあったそのリードは、想定外の“梅野不在”で、さらに磨きがかかったという。藪氏が明かす。
「手の内を勝手に明かすことはできないから詳しくは言えないが、坂本は、どんな局面でも、カウント別リードのセオリーをけっして外さない。村上や大竹のような技巧派タイプの投手にとっては、それが何よりの安心感を生んだんでしょう」
藪氏は大竹のとある発言に驚いたことがあるという。
「彼が10勝到達時のお立ち台で言った“ピンチでも遊び心を”なるフレーズは、私が本人にしたアドバイスそのまま。その点では、私も彼のブレイクに貢献しています(笑)」(前同)
■主力のほとんどが生え抜き
ところで、今季の岡田阪神が誇る最大の強みは、投打の主力のほとんどを生え抜きが占めていること。
その意味では、大型補強による“血の入れ替え”の断行で優勝をつかんだ03年の星野仙一監督時代とは、チーム事情は大きく違う。
「星野監督はトレードなどでチームを活性化させる手法が特徴です。そして、赤星憲広ら星野政権時の主力たちは“野村(克也)の遺産”とも呼ばれていました。ただ、岡田監督も過去の遺産を大いに生かしています」(前出の阪神担当記者)
どういうことか。
「18年に最下位となり、辞任した金本(知憲)監督の遺産です。坂本や青柳晃洋(29)は、金本監督1年目にルーキーでしたし、監督が周囲を押し切って獲得した大山は、番記者陣が“白鷗大って、どこだ?”と慌てふためいたほどの驚きの指名。同年には、今季交流戦でロッテ・佐々木朗希(21)と投げ合って12奪三振の完封を披露した才木浩人(24)も獲っています」(前同)