元日の夕方、多くの人が帰省した家族との団らんを楽しんでいた最中に、能登半島を襲った巨大地震。M(マグニチュード)7.6、震度7の揺れに加え、1メートル超えの津波と大火災が、多大な犠牲者を出した。
新年の日本に衝撃を与えた「令和6年能登半島地震」。原因究明が進むほどに恐ろしい事実が判明した。
■専門家が警告「次は和歌山北部」
能登半島地震では、東京でも震度3を記録したように、長い横揺れによって地震波が能登半島から遠いエリアまで伝わったのが特徴の1つだ。地震学者で京都大学名誉教授の梅田康弘氏は、その仕組みをこう説明する。
「通常、断層はジェット機の10倍くらいの速さで破壊が連続していきます。今回の地震ではずれ動いた断層が150キロと長く、それが横からの強い地震波を長く感じた原因となっています」
さらに、もう1つの要因が、地下16キロと震源が浅く、地震のエネルギーが1995年に発生した阪神・淡路大震災( M7.3)の約2.8倍だったこと。
このため、被害が甚大になったわけだが、大きな揺れの原因はそれだけではないという。東京工業大学教授の中島淳一氏(地震学)はこう説明する。
「今回の地震の元凶として注目されているのが“流体”です。流体の正体は、地下深い岩盤の中にある水。地下10キロで300度の高温となり、その流体が断層に入り込むと断層面を浮かせ、その強度が低下して滑りやすくなるんです」
地下から上がった水が潤滑油の働きをし、大地震の引き金となっているのだ。
さらに、前出の梅田氏は「いつどこで大きな地震が起きてもおかしくはない」と指摘する。
内陸部には数えきれない活断層が縦横に走り、かつ、太平洋・北米・ユーラシア・フィリピン海の4つのプレート上に日本列島が位置しているためだ。
「日本列島そのものが変動帯といえます」(前同)
●地下に流体の存在が確認されているエリア
では、次はどこが危ないのだろうか。
現在、地震学者らが最も注目しているのが、先述の“流体”なのだという。
「20年ほど前からその存在が知られ、調べていくうちに、過去日本を襲った大地震は流体に関係していることが分かってきました」(前出の中島氏)
すなわち、地下に流体の存在が確認されているエリアは、危ないといえる。
実は、昨年5月5日にも、能登地方では震度6強の地震が発生。『週刊大衆』2023年5月29日号は、これが大地震の予兆となる可能性を報じていたが、不幸にもその予測は的中してしまった。
「実は、昨年5月の地震の際にも流体の存在は指摘されていました」(全国紙社会部記者)
一方、中島氏は、その当時、和歌山県北部の地下で流体の存在を確認していたという。
「岩盤の中に水が含まれていると地震波の伝わる速度が遅く、それで流体の存在を確認できます」
中島氏がこう続ける。
「その和歌山県北部から大阪湾を通って神戸に至る直線上で流体が確認され、そのラインが流体の通り道になっていると考えられます。周囲に火山のない有馬温泉(神戸市)に温泉が湧くのも、神戸で大震災が起きたのも、この流体の影響と考えられます」
このほか、中島氏が注目するのは国内最大級の活断層である中央構造線だ。
「そのうち、三重県から西へ、紀伊半島を通って四国へ抜けるエリアの一部でも地震波の伝わり方の遅い地域がありました。流体の影響で断層が動きやすくなっている可能性があります」
該当エリアはいっそうの備えをしておきたい。