■唯一無二の“トルネード投法”野茂英雄
そうなると、どんなレジェンドといえど、右腕にもはや勝ち目はなさそうだが、識者の2人が共通して「勝機はある」として挙げたのが、ともに大リーグで一時代を築いた右腕2人。まずは、唯一無二の“トルネード投法”とフォークをひっさげて、海外進出の扉を開いた野茂英雄だ。
「奪三振率も高い縦の変化球であるフォークを武器に、低めで勝負ができる。大谷が得意とするベルト付近より少し上のゾーンに注意を払えば、それなりに勝負はできそうです」(大南氏)
現役時代は野村ID野球の薫陶を受けた捕手でもあった秦氏。捕手として野茂をリードするなら、対大谷の配球は、どうなるか。
「安打ならOKという配球。アウトローでカウントを稼げればベスト。ボール先行になった場合はコースだけは間違わないようにカット系のボールでファールを打たせられるか……」(秦氏)
■ワールドシリーズで“胴上げ投手”となった上原浩治
続くもう一人は、フォーク&スプリットを武器に日米で活躍した上原浩治。抑えを務めたレッドソックス時代の13年には、ワールドシリーズで“胴上げ投手”になっている。
「上原さんのコントロールはメジャーの歴史に残るほどです。奪三振数を与四球数で割った『K/BB』は、投手の制球力を図るうえで重要な数値なんですが、23年のMLB平均で2・65のところ、上原さんは生涯通算で7・33と文句なし。レッドソックス移籍初年度の13年には11・22という数字を叩き出しています」(大南氏)
では、どのような攻めで大谷を打ち取るのか。
「唯一の弱点とも言うべき、インハイとアウトローの対角線を正確に攻めます。インハイのストレートでストライクを稼いで、外角低めにフォークを落とす。ただ、タイプ的に長打を浴びやすい球質ではあるので、三振かホームランかという両極端な対決になりそうです」(前同)
その上原の誇る制球力はプロ入り当初から、フォークさえ自在に操るほど。キャンプの時点で捕手の要求通りにフォークを投げ込む彼の姿には、視察に訪れた“フォークの元祖”杉下茂氏も驚嘆したという。
「杉下さんのフォークは、ご本人が“行く先は球に聞いてくれ”と言うほど。それを上原さんは自在に操った。WBCで初めてコンビを組んだ城島健司も“君が投げてほしいと思ったところにミットを構えていいよ”と言われて度肝を抜かれたと、振り返っていました」(前出の元スポーツ紙デスク)
誌上“仮想対決”では、レジェンドたちでも、かなり分が悪そうな大谷との真剣勝負 。過去の名選手の偉業も我々の想像も、すべてを超えた大谷のプレーが見られるまで、あと少しだ。